夏井川渓谷の小集落・椚平(くぬぎだいら)を通過したとき、ポッカリ開けた右手山側の奥に大きな風車がニョキッと突き出ているのに気づいた。川前の神楽山(808メートル)にできた風力発電施設の風車にちがいない。
神楽山は、平市街の平神橋付近からは水石山(735メートル)の右手、東の二ツ箭山(709メートル)のスカイラインが沈み込んだ左側にちょこんと見える。
日曜日、渓谷の隠居へ行くのに平郊外の田んぼ道を通る。中塩に出ると、西方に三大明神山(706メートル)の風車群が並び立つのが見える。
中平窪でもやはり西側前方から三大明神山の風車群が迫ってくる。田んぼ道をさらに右へ曲がると、今度は北方の奥、二ツ箭山の左(西)に神楽山の風車群が目に入る。
神楽山の風車群は最近できたばかりだ(三大明神山もその点では同じ)。これらの風車群はどこから、どう見えるのだろう。二ツ箭山を目印に、行く先々でスカイラインをチェックした。
草野心平記念文学館は小川の高台に建つ。ロビーの透明な壁面から、真正面に小川のシンボル・二ツ箭山が見える。
その左奥、神楽山のスカイラインに風車が立っているのがはっきりとわかる=写真。「あれが神楽山ですか」。たまたま居合わせた小川の住民に聞くとうなずいた。
秋分の日はカミサンの実家の墓参りをした。墓地は平・旧城跡西北端の寺の裏山にある。防災工事が行われた崖から好間の市街地と水田が一望できる。
その背後には阿武隈の山々が屏風のように連なる。西から北へ、さらに東へと三大明神山~水石山~二ツ箭山が、それぞれ谷間をはさんで独立したスカイラインを描く。
神楽山はやはり、水石山と二ツ箭山の稜線が交わるように下って消えるあたりに小さく見える。墓からも「輪のないベンツマーク」がよく見える。
圧巻は夏井川河口から右岸堤防の天端を車で走っていたときだ。湯ノ岳・三大明神山~閼伽井嶽・水石山~二ツ箭山・三森山まで、ざっと視界150度ほどの大パノラマが展開する。むろん、神楽山も見える。
湯ノ岳には送信塔、三大明神山には風車群、水石山には送信塔と空の灯台、二ツ箭山には広野火発の送電鉄塔と、無垢のスカイラインはどこへ行ったら見られるのか――そんな思いになるほど、人工物がどの山にもある。
グーグルアースと国土地理院の2万5千分の1地図で送電線を追ったことがある。
送電線は火発のある広野町の海岸部から西へ、浅見川の源流部である阿武隈高地へと延び、いわき市北部の猫鳴山南方をかすめたあと、隣の二ツ箭山の背中をこするようにして南西へ進み、肩口から夏井川支流・加路川へとなだれる山腹を駆け下りながら、さらに西へと向かっていた。
その火発の2号機が9月30日で廃止されたというニュースに接した。すでに1・3・4号機が廃止され、残るのは石炭を燃料とする5・6号機だけという。送電鉄塔を見ながら、なんともやるせない気持ちになった。
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