若いころ、尊敬するドクターの家に仲間が集まって、よく飲み会をやった。秋から冬には「ホウレンソウ鍋」を囲んだ。
いわき市は昭和61(1986)年、「非核平和都市宣言」をする。市民有志が中心になって短期間に何万人もの署名を集め、市と市議会を動かした。
政治運動とも市民運動とも無縁だったドクターが事務局長を引き受けた。そのときに出会い、ドクター宅に呼ばれて飲むようになり、初めてホウレンソウ鍋をつついた。
ホウレンソウ鍋は映画監督でグルメだった山本嘉次郎が考案した。ドクターは、山本監督がテレビで紹介していたのを試して病みつきになったという。
レシピは簡単だ。水を張った鍋を卓上コンロにかけ、スライスしたニンニクとショウガを入れて、塩で味を調え、しょうゆを加えてほんのり色をつける。
そこへしゃぶしゃぶ用の豚肉と、葉を一枚一枚ちぎったホウレンソウを入れて、熱が通ったら食べる。それだけ。
ブログでレシピを紹介すると、反応があった。内郷の知人からは「常夜(じょうや)鍋」と教えられた、とてもおいしかった記憶がある、というコメントがフェイスブック経由で入った。
カミサンの平の同級生も、はがきでコメントを寄せた。「私は友人から『常夜鍋(とこよなべ)』とおそわって食べてました」
50~60代のころ、冬に人が集まると、よくホウレンソウ鍋をした。初めての人間も、1回ですぐ料理法が頭に入る。
シンプルで飽きがこない。枝分かれするように料理が継承・伝播されて、あちこちでその家の冬の定番料理になっている。わが家もそのひとつだ。
というわけで、年末のある晩、「孫」の親と4人で「ホウレンソウ鍋」を囲んだ。老夫婦だけでは食べる量も限られる。4人だからこそできる鍋だ。考えてみたら、もう6年もやっていなかった。
たまたま、カミサンの友人が「いいホウレンソウがある」という。ハマに近いところにある直売所で売っている。早く行かないとなくなる、というので、友人が当日午前中に買って来てくれた。
確かに「いいホウレンソウ」だ。採りたてなので、水分をたっぷりと含み、青々としている。しかも、きれいに泥が洗い流されていて、あらためて水洗いをする必要がない。
根元からちぎって、どさっと葉を入れ、湯がいたらすぐ取り皿に入れて食べる。歯ごたえがある。新鮮だからシャキッとしている。
後日、ホウレンソウが大好評だった旨を、カミサンが友人に話すと、また直売所からホウレンソウを買ってきた=写真。
見た目からしてみずみずしい。葉が立っている。お浸しにした。やはり「張り」がある。採りたての証拠だ。根っこの赤みもほんのり甘い。
地元で栽培され、すぐ直売に回されて消費者の口に入る。都市部と農村部がほどよい距離で共存しているいわきならではの良さだ、と私は思う。いわきは、魚だけではないのだ。
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