2008年12月18日木曜日

木口木版画の「アンデルセン」


先日(12月14日)、夏井川渓谷の無量庵で落ち葉を堆肥枠に入れ、「内城B菌」をまいた。森を巡ってヒラタケに遭遇した。そのあとのことである。カミサンと帰宅途中、ある店でラーメンを食べた。

この店がなんともおかしい。旅館であり、銭湯であり、食堂であり、雑貨屋であり、「55円ショップ」であり、家具のリサイクルショップでもあるのだ。ここまでやるか――店へ寄るたびに苦笑がわく。

一言でいえば、俗悪、まがい物を意味する「キッチュ」に近い世界。室内が徹底して大衆路線で彩られている。質より量。小より大。少々値の張るラーメンがそうだ。食べきれない。窓の棚や壁に沿って、ゆで卵などの無料サービスコーナーがある。その数がまたすごい。つい、ゆで卵に手が出た。

唯一、高価な雑貨として壁に絵をかけて売っている。ぶったまげた。値段は伏せるが、それなりに評価されている知人の小品と思われるものがある。有名版画家の作品もある。本物だ。まるで土産品扱い。「偽物じゃないの?」。カミサンが知ったかぶりをするのを制して、売り値を半分にまけさせて木版画を買った。

木口木版画だ。シルクハットをかぶったアンデルセンの肖像をきめこまやかに彫り込んである。そこに、版画家はいろいろ仕掛けを施した。向かって右側の後ろ髪は、実はアンデルセンの横顔=写真。ほかに、左目のわきのあざ(しわ?)、下くちびるの影が「だまし絵」になっている。眉毛の影もそうかもしれない。

目に止まった作品は昔、知り合いのギャラリーで見た記憶がある。これは推測だが、ギャラリーを介して作品を購入した法人ないし個人がいて、なんらかの理由でほかの物と二束三文で放出したのが、その店にたどり着いたのだ。

掘り出し物はどこに埋まっているか分からない。頭をニュートラルにして、見聞きするものに素直に反応する――そうすると、神様がおまけをくれるときがある。アンデルセンの木版画はまさにそれだった。

知人の作品と思われるのは、1つは布を素材にした抽象的な小品(現役)、もう一つは雪景色をリアルに描いた油彩画(故人)。値段のつけ方がなんともアンバランスなところがいい。きらいではないから、今度行ったら「たたき買い」をしようかな、などと思うのだが、値段が今のままかどうか。

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