2008年12月13日土曜日

「ヒラタケ白こぶ病」を知る


おととい(12月11日)、所属しているいわきキノコ同好会(冨田武子会長)の役員会があった。終わってキノコ談議に入り、今年の「成果」を報告し合った。1人が里山でマイタケを採ったほかは、景気のいい話は聞かれなかった。

今年最大のニュースは、いわきでも「ヒラタケ白こぶ病」が発生したことだろう。冨田会長から聞いて、ピンとくるものがあった。今年の夏以降に現れたウスヒラタケのひだに、異常なほど粒々ができていた。それだ。四半世紀の間キノコを見てきて、初めて目撃した。粒々を払おうとしたが、こびりついて離れない。気持ち悪くて食べる気にはならなかった。

天然ヒラタケだけでなく、栽培ヒラタケもやられたという。冨田会長のもとへ持ち込んだ人がいて、「ヒラタケ白こぶ病」が分かった。見た目が悪いから商品にはならない。掲載の写真は10月に発生した里山のウスヒラタケで、不鮮明だがひだには「白こぶ」ができている。それを意識して撮ったわけではない。当時は症状を知らなかったのだから。

九州・中国と西日本で発生していたのが、北上してきたのだという。新潟県森林研究所によれば、考えられる感染経路はこうである。

キノコバエの一種(ナミトモナガキノコバエ)に運ばれて来た線虫がヒラタケのひだに付着する。すると、ヒラタケは虫こぶ(白こぶ)を形成する。ヒラタケ属の仲間は、栄養菌糸(キノコ=子実体=ではない、ヒラタケ本体の菌糸)上の分泌器官からオストレアチンという毒素を出し、それに接触した線虫を動けなくする。そして、食べてしまう。

線虫が「白こぶ」をつくったのではなく、線虫に侵入されたヒラタケ自身が防衛策として「白こぶ」をつくり、しかも食べてしまう。大したものだ。冨田会長の話に、みんな目を丸くした。しかし、そうすると線虫は何のために寄生するのか。菌糸の攻撃をかいくぐり、産卵して次世代へと命をつなぐものがいるはずだ。そうでなければ意味がない。

それはともかく、栽培ヒラタケの対症療法は寒冷紗をかけてキノコバエの侵入を防ぐことだという。

この「ヒラタケ白こぶ病」、北上して来た点が気になる。線虫を媒介するキノコバエが東北へと生息範囲を広げているのだ。今までなかったモノ・コトが起きたり、現れたりする。森の小さな異変は地球温暖化という大きな病と無縁ではないだろう。

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