2008年12月10日水曜日

個展を見に山里へ、新開地へ


日曜日(12月8日)の午後、夏井川渓谷の無量庵からいわきICに直行し、常磐自動車道を利用して、いわき市南部の田人にあるギャラリー「昨明(カル)」を訪ねた。帰りは一般公道を使い、区画整理事業で生まれた新しいマチ・泉玉露の五丁目にあるギャラリー&カフェ「ブラウロート」をのぞいた=写真は小野(上)、安斉さんの個展の案内状

「昨明」は鮫川支流・四時川を縫って走る国道289号沿いにある。スーパーリアリズムを手がける小野重治さんが、14日まで個展を開いている。ちょうど本人がいたので、いろいろ話を聴いた。作品目録に収められた画歴をみると、私が彼に出会ったのは25年余前だ。35歳と27歳。お互いに若かった。

高木のハクモクレンとタイサンボクの白花を、花と同じ高さで大きく描いている。いったん写真に収めたものを見ながら描き込んでいくという。被写体が被写体だけに、花に合えるのは年に1回だけ。時期を逃すと来年まで待たなくてはならない。

にしても、同じ目線で花を見るのは至難の技だが? とっておきの場所があるという。坂道からちょうどいい位置で花を撮影できるのだ。なるほど、それでミツバチかハナアブの「虫の目」でタイサンボクの花びらと蕊(しべ)に接近することができるわけだ。光がやわらかい。花びらの裏から光が当たり、微妙な陰影を表現した作品に引かれた。

新開地にある「ブラウロート」へは、いつも一発でたどりつけない。整然としたマチはどの区画も同じに見えて、私には分かりづらいのだ。「鉄の彫刻家」安斉重夫さんが28日まで個展を開いている。ここでもご本人と話すことができた。楽しくなる作品展だ。

鉄を切ったり、溶接したりして、9割までは作品をつくる。残りの1割は見る人にゆだねる。触ったり、たたいたりしてもらうことで作品が完成する。触り方やたたき方で完成にバリエーションが出てくる。人が参加する作品づくりを好ましいと思った。

「物語性」を強く打ち出す安斉さんだが、音の出る彫刻としての「遊び」にも力を入れる。たたけば打楽器。はじくためのスティールもあって、つまびけば弦楽器。鉄の彫刻が鉄の楽器になるのだ。西洋の音階に基づくクラシックよりは、アジアやアフリカの民族楽器とコラボレーションをしたら面白い。

小野さんの虫の目が見た大輪の花、安斉さんの鉄の音楽――。ギャラリー巡りの楽しさがこんなところにある。

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