2008年12月16日火曜日

夏井川渓谷の「松枯れ」の正体は


いわきキノコ同好会の役員会(12月11日)での話の続き。「ヒラタケ白こぶ病」のほかに、夏井川渓谷の「松枯れ」が話題になった。「あれは松くい虫でしょ」。私が言うと、「酸性雨だよ」と一斉に反論された。

昔、植物の専門家に言われたことが頭をよぎった。「針葉樹は酸性雨に弱い。夏井川渓谷の松枯れはそれだろう」。そして、若い植物研究者は「夏井川渓谷の松枯れは、松くい虫が原因」と言った。見解が2つに分かれた。両方とも正しいのだ。そのことをキノコ同好会の役員会で、あらためて知った。

週末を夏井川渓谷の無量庵で過ごすようになってから、13年余がたつ。1月に阪神・淡路大震災、3月に地下鉄サリン事件が起きた平成7(1995)年初夏、無量庵の「管理人」を引き受けた。無量庵は昭和40年代、義父がいわき市平の街なかの古い建物を解体・運搬して建てた。もちろん業者に頼んで。

そのころ、渓谷の斜面の赤松はまだ元気なように見えた。が、年を追って松葉に赤いメッシュが入り、「茶髪」が増え、やがて葉のない、白い幹と枝だけの「卒塔婆」になった。毎年、その数が加速度的に増した。今は、尾根筋のキタゴヨウも「卒塔婆」になりつつある。

キノコ同好会での話は、こうだった。酸性雨が降ると土中にしみこんだ雨で松の根がやられる。当然、松は衰える。衰えたところに松くい虫が侵入する。若く元気な松には、松くい虫は侵入しない。

マツタケを採ったことはない。が、マツタケが減っているのは、ひとつには酸性雨によって松の根がやられ、松の根と共生するマツタケ菌がやられるからだといわれる。赤松にもマツタケの出やすい樹齢がある。わが無量庵の真ん前に散在する老大木ともなると、マツタケの生産性よりは風格だ。それが今は立ち枯れ、幹が途中から折れて斜面にぶっ倒れたままになっている。

キノコ同好会での話を受けて、あらためて夏井川渓谷の斜面を見たら、若い松にも茶色いメッシュが入っていた。全体が「茶髪」になったものもある=写真。若い松の「茶髪」は最近の現象だ。

元気な若い松は松くい虫に負けないというから、やはり酸性雨が「主因」なのだろう。酸性雨で弱ったところに松くい虫が追い撃ちをかける。つまり、「副因」。そんな負の連鎖で夏井川渓谷の松は次々に立ち枯れているのだ。すると、次はモミか。

春のアカヤシオ。秋の紅葉。夏井川渓谷独特の景観はモミや赤松、キタゴヨウの緑との対比で輝く。これが壊れつつあるということだろう。

0 件のコメント: