2009年12月3日木曜日

タヌキが吊り橋をとことこと


夏井川渓谷(いわき市小川町)にある無量庵に濡れ縁をつくった。なにか手を加えるときは、わが家の近くに住んでいる中学の同級生に頼む。リフォームのホームドクターだ。彼が作業している間、対岸の森を巡ることにした。

水力発電所の吊り橋を利用して対岸へ渡ろうとしたら、向こうからとことこやって来る動物がいる。タヌキ? 午前10時過ぎだ。こんな昼間にもタヌキは歩き回るのか。渓谷の小集落である。紅葉シーズンが過ぎた今は、日中も森閑としている。そんなところではタヌキも昼間、安心して出歩くのだろうか。

相手はこちらに気づかない。めったにないチャンスだ。吊り橋の手前にある小屋の陰にかがみこみ、狙撃兵よろしくタヌキがカメラの“写程距離”に入るのを待った。吊り橋を渡りきったら顔を合わせることになる。その前に何コマか撮影しておきたい。我慢して待ったのはいいが、最後の最後に1、2秒早く「カシャッ」とやってしまった。

撮れたのはたった2コマ。1コマは、通せんぼの柵の標識に顔が隠れていた=写真。もう1コマは、シャッター音に気づいて吊り橋のたもとから左折してヤブに消える後ろ姿がぼんやり写っているだけ。数秒我慢すれば、タヌキの全身を、人間と鉢合わせしてびっくりした顔を撮影できたのに――と悔やんでもしかたない。

無量庵へ通い始めて十数年、輪禍に遭って冷たくなっているタヌキやテン、ウズラ、ノウサギ、猛禽類に襲われて羽だけになったキジバトやツグミを見てきた。が、現に生きて動いている動物はとなると、森の中のタヌキの後ろ姿、倒木の上を渡るリス、岸辺で走り回るイタチかテンをほんの一瞬目撃しただけ。

当然、カメラを構える前に視界から消えているから、写真はない。今度が初めてのチャンスだった。こんなチャンスはそうないだろう。残念。いつかはと思い続けているイノシシだが、こちらはまだフン止まりだ。

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