北欧を旅して思ったことの一つは、木造建築物の外観が鮮やかすぎるくらい派手なのに、不思議と周りの風景に調和していることだった。家の壁面が黄色だったり、オレンジ色だったり、レンガ色だったりする。一つ一つは派手でけばけばしい。
なのに、港でも、山里でも、周囲の運河や農場、道路、川などに溶け込んでいる。一枚の絵のようで、不思議と心が安らぐのだった。
古くなれば当然、建て替えなくてはならない。が、同じ形・色にする。人が住んでいなくても維持補修をする――そんな決まりがあるようなのだ。建物の中は自由に変えられても、外観は変えられない。それがあちらのルール。
世界文化遺産の「ブリッゲン地区」(ノルウェー)に限らない。世界自然遺産のフィヨルドの岸辺にも、U字谷にも、あるいはアンデルセンの愛した港町・ニューハウン(デンマーク)にも、カラフルな色彩の木造建築物が存在していた=
写真。それが、昔と同じようにそこにある。
フィヨルドにある家は、人が住んでいなくても、夏場は持ち主が出かけて草を刈る。そのための補助制度がある、という話を聞いた。観光客には見えない、維持管理の苦労だ。やはり、見た目、景観維持――が目的。カネが出るから草を刈る、といってもいい。
そうして景観を維持する国々だ。賛意と皮肉をこめて「おとぎの国だな」とわれわれは思った。いや、「おとぎの国」の感覚を持っていないと景観は守れないのかもしれない。
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