2009年4月4日土曜日

アカヤシオ咲く


夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川)に春を告げるのは、アカヤシオ(岩ツツジ)の花ではない。そこに暮らしている人間にとっては、墓参りに係累がやって来る春分の日、ワサビの花、少し遅れて凍みがゆるんだ畑にジャガイモを植えたとき、あるいは地べたに生えるように咲くキクザキイチゲ、かもしれない。当然ながら、1人ひとり違う。

が、アカヤシオの花はそれら一切を含んで夏井川渓谷に春がきたことを告げる、圧倒的な力を持っている。モミと松(下部の赤松、上部の五葉松)の緑を背景に、同じ落葉樹が裸のうちにピンク色の花を次々と咲かせる。ゴツゴツした急斜面を自分のキャンバスにして壮大な点描画を展開する。全山満開時の絵は、ちょっと言葉では表せないほど美しい。

きのう(4月3日)見たら、3カ所でアカヤシオの花が咲いていた。最初に咲く場所は決まっている。わが埴生の宿・無量庵の対岸左斜め前方、岩盤が張り出したあたり。次はちょっと下流、籠場の滝の近く=写真。最後は江田駅に近い椚平の対岸だが、ここは山が遠い。

肉眼では、それぞれ4~5本のアカヤシオが鮮やかな花をつけている程度。双眼鏡で確認すればその2、3倍は赤くつぼみを膨らませているはずだが、あえてそこまではしない。翌日、あるいは翌々日には開花し、肉眼でもはっきりと見えるようになるのが分かっているからだ。

3カ所に共通しているのは、たっぷり夕日を浴びる場所だということ。日暮れになると罪を告白したくなるような少年には、アカヤシオの花は見るだけで救いになるかもしれない。

アカヤシオの花と同時に咲き出すのが林床のイワウチワ。「木守の滝」の上、急斜面の奥に群落がある。無量庵から対岸を眺めながら、このごろは<咲いているだろうな、きれいだろうな>と、イマジネーションをはたらかせるだけになった。

さて、アカヤシオの花が満開になるのは1週間後、4月12日前後だろう。今度の日曜日(4月5日)あたりから、わが無量庵の周辺はにぎやかになってくる。隣家の所有者は古い家を解体して行楽客のための「展望台」にした。秋の紅葉と同様、吸い寄せられるように車と人がやって来るはずである。

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