2009年4月30日木曜日

渓谷の鉄橋を行く列車


夏井川渓谷(いわき市小川町~川前町)は木々が芽吹き、いちだんと緑の色を増してきた。とっくにアカヤシオの花は散り、ヤマザクラの花も高い尾根を除いてあらかた散った。とはいえ、まだ全山が若葉色に染まるほどではない。ホオノキのように芽吹きの遅い木がある。

あちこち展覧会巡りをしているうちに夏井川渓谷の無量庵へ行く日が遅くなった。1週間に一度のサイクルが10日以上になって、「みどりの日」の昨日(4月29日)昼、我慢できずに無量庵の雨戸を開けに行った。

ついでに、たけの伸びたサヤエンドウに合わせてつるをからませる胴縄を張り、三春ネギ苗にとりついている黒い虫をつぶした。対岸の森を巡った。さて、あとはどうするか。森の中で閃いた。いや、2月の失敗の記憶がよみがえった。<渓谷に架かる鉄橋を渡る列車の写真を撮ろう>。

夏井川渓谷の上流、無量庵から車でおよそ15分の川前町にその鉄橋がある。2月初旬の朝、田村市常葉町の実家から無量庵へ戻る途中、鉄橋が目に入り、いわきからの2番列車が通過するころあいだったので、「にわか撮り鉄」になった。山側に坂道がある。そこから鉄橋がよく見える。

ただし、そのときは時間の計算が狂って待ちきれずに車へ戻った。すると、すぐ列車がやって来た。当然、写真は撮れない。「撮り鉄」に必要なのは辛抱。それを頭の隅っこにおいて再挑戦しようというわけだ。

推測した時間とそう変わらない午後1時48分ごろ、いきなり山陰から列車が鉄橋の上に現れた=写真。列車はトンネルに入るとき、警笛を鳴らす。そのイメージで鉄橋でも、と思っていたが、普通に、静かに鉄橋の上を走る。

背景の雑木山はまだ芽吹きの途中。ずっと手前、眼下の田んぼには人がいて、畔の草を刈っている。夏井川には人が渡る程度の簡易な橋が架かっている。その先、がっしりした橋脚の上に線路が走り、今しも2両編成のディーゼルカーが空中を行くところだ。それを何コマか撮った。

せいせいした。せいせいしながらも自分に言い聞かせる。<おれは“鉄っちゃん”ではない、瞬間的に“撮り鉄”になっただけだ>。渓谷を行く列車の写真は撮っても、わざわざよそへ撮りに行くことはない。いや、磐越東線に限って言えば、どこでもカメラを向ける。磐越東線限定の“撮り鉄”である。

0 件のコメント: