2009年4月5日日曜日

大久保草子木版画展


駆け出しのころ、「サツまわり」が一緒だった1歳下の「同業他社」氏から定年退職のはがきが届いた。その前に、共通の知人の消息を尋ねる電話があった。知人は90歳を超えている。「生きてますか」「生きて、通信高校生をやってるよ」。「インターネットは?」と聞けば「やらない。パソコンが壊れてからはそのまま。必要ないでしょ」と潔い。

届いたはがきの欄外コメントに苦笑した。閑職についたこの2年間は各種のコンサートを楽しんだ。一番好きなのは井上陽水。去年、いわきで行われたコンサートへは行けなかったが、6月の福島公演を楽しみにしている。コンサートの聴衆の大半は白髪・はげ・デブです――。おいおい、お前さんは白髪で、おれはサバンナじゃないか。

あちらはコンサート、こちらは画廊巡り。きのう(4月4日)、カミサンが行こうというので車を飛ばした。いわき市の鹿島町にある創芸工房「刺繍・織り・染め――鈴木智美の世界展」から始まって、泉町のアートスペース泉「現代工芸福島会展」、ブラウロート「カジ・ギャスディン展」、そしてギャラリーいわき「大久保草子木版画展」=写真=を巡る。 いずれもオープン初日ないし3日目と始まったばかりだ。

カジ・ギャスディンはバングラデシュの画家。少しばかりバングラデシュ関連のNGOにかかわっているので、見に行こう――というカミサンの提案で画廊巡りをしたのだった。故若松光一郎さんばりの色彩の音楽が好ましかった。

大久保さんは何日か前、ダンナさんと一緒にわが家へやって来た。息子と知り合いで、息子が話をする待ち合わせ場所にわが家を指定したらしい。その間、こちらは「良寛さん」になって孫のお守りをする。

大久保さんの木版画はファンタジックな要素に満ちている。が、そこには観念ではない、ちゃんとした観察に基づく自然が息づいている――そういうことを感じさせるに十分なリアリティーを持っている。

もっともっと懐の深いいわきの自然を見たらいい。「一度、夏井川渓谷の埴生の宿へ来ませんか」。カミサンが大久保さんに言う。夏井川渓谷のアカヤシオ、あるいはシロヤシオを見てインスピレーションが湧くこともあるだろう。

絵はがきのような木版画はいらない。いわきの自然と向き合うことで深く豊かに独自性を増す幻想――そんな作品をいつのまにか私は求めているのだった。

0 件のコメント: