2011年3月2日水曜日

長い竹藪


草野心平の詩に「故郷の入口」がある。平駅(現いわき駅)に着いたあと、「ガソリンカー」に乗り換え、ふるさとの小川へ向かう。赤井、小川郷と駅は二つ。途中、左手に三野混沌・せいのいる好間・菊竹山の一本松が見える。

心平は回想にふける。「北海道釧路弟子屈の開墾地での苦闘の果ての失敗から。女房の骨壺をリユツクに背負い。帰つてきた猪狩満直とこの道をとほり登つていつた。/その時三野の小舎のなかには。蜜柑箱の上に死んだばかりの子供の位牌があり。香爐代りの茶箱の中の灰には線香が二三本ささつてゐた。」

ガソリンカーは赤井駅に止まって発車する。赤井と小川の境の切り通しが近づく。「切り割だ。/いつもと同じだ。/長い竹藪。/いつもと同じだ。」。下小川の「長い竹藪」は今も夏井川の両岸を小川郷駅の方へと伸びている=写真。真竹のようだ。自然繁殖をしたのだろう。竹林内はうっそうとして暗い。

心平の詩を読んでから、夏井川そばの下小川の道路を通るたびに「長い竹藪」を見る。これだって手を入れれば立派な記念物になるのではないか。

それに、間伐した真竹を利用してなにか細工する。例えば、竹炭。ただの真竹ではない。心平の詩に出てくる「長い竹藪」の真竹だ。いくらでも活用する方法があるのではないか。そんなことを思うのだが、無理か。

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