2012年3月3日土曜日

チャーが逝く


わが家の老猫「チャー」が3月1日の夜更け、眠るようにして彼岸へ旅立った。1年前、老衰のために後ろ足を引きずり、排便もきちんとできなかったのが、3・11後、人間が避難している間によみがえった。猫の身に奇跡が起きた。その神通力もおよそ1年で果てたか。いや、1年ももったというべきか。

福島第一原発の3号機の建屋が黒煙を上げて爆発した翌日、3月15日、本能的な危機感に突き動かされて、孫たちを連れていわきを離れた。チャーとほかの2匹の猫は、えさと水を用意して家に残した。足かけ9日後に帰宅した。避難先では、チャーは衰弱して息絶えているのではないか――そんな心配に沈んだ。が、現実は逆だった。

ちゃんと4本足で歩けるようになっていた=写真。排便もきれいにできるようになっていた。カミサンがすっくと立っているチャーを見て歓声をあげた。9日間は、人間は世話をしなかった。なぜかそれでチャーの生命力が復活した。わが家ではこの猫の奇跡がささやかながら、3・11後のひとつの希望になった。

でもやはり、である。夏から秋にかけて右目が白濁した。次第に動きもにぶくなった。体がやせ細り、毛のつやがうせた。そして、3月1日。なぜか、朝から外と家とを行ったり来たりした。

午後4時すぎ、カミサンが知人に教えられた。「家の犬走りに横たわっている猫がいる。死んでいるようだ」。チャーだった。死んではいなかった。タオルケットにくるんで抱き上げ、居間の石油ストーブのそばに置いた。いのちの火が消えかかっている。カミサンは死に水をとった。

チャーは、東京・八王子から長男に拾われてわが家にやってきた。猫年齢では13歳くらい、人間だと80歳は越えているか。交通事故に遭わずに寿命を終えた初めての猫だ。

きのう(3月2日)。昼前、カミサンの従兄の葬式に夫婦で出た。午後、チャーを夏井川渓谷の無量庵へ運び、夫婦で猫の葬式をした。夏井川渓谷の無量庵では毎夏、長男が学生仲間と合宿する。13年前、八王子で拾ったチャーを連れて来た。チャーにとっては初めてのいわきの地だ。奇跡の猫、ここに眠る――という墓標を胸に立てた。

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