2008年11月25日火曜日

ランドマーク「塩のケヤキ」


およそ30年前に今の住まいへ引っ越して来た。その日から朝晩、目にしてきたケヤキがある。今も目にしている。いわき市平の中心市街地から車で10分ちょっと。平・塩の国道6号に面して堂々と枝を広げている=写真。先日、たまたまケヤキの持ち主と話をした。樹齢はおよそ130年だという。数年前まで2本あった。

ある晩、台風が襲い、根元にサルノコシカケの生えていた1本が前の国道に倒れた。ものすごい地響きがして外へ出た。幸い下敷きになった人や車はなかった。持ち主はすぐ警察に連絡する。業者もやって来て、交通規制をしながらケヤキを片付けた。同じ日、平の街なかでも教会のヒマラヤ杉が倒れるなどした。

家を訪ねたついでにケヤキの大木をじっくり見る。何年か前まで剪定していたが、木をいじめるようでやめたという。それで枝が大きく伸びやかに広がっている。幹は夫婦で手をつなげるほど太い。街からの行き帰りに見てきた「塩のケヤキ」の素顔がよく分かった気がした。

「塩のケヤキ」は一種のランドマークである。この木を目にしながら通学する小・中学生や通勤するサラリーマンにとって、大人になって帰省したとき、あるいは出張から帰ったとき、なにかホッとさせるものがあるのではなかろうか。「わが領分」に入ったことを教えてくれる「一里塚」のような存在――。

「一里塚」といえば、国道6号は江戸時代、「浜街道」と呼ばれた。街道松が植えられていた。ケヤキの持ち主はずらりとあった街道松を記憶しているという。6号がまっすぐに拡幅・改修される前のことで、私が住む「旧道」にも街道松が何本かあった。

道端の松は消えたが、明治時代の初期に植えられた「塩のケヤキ」は残った。大切にしたいランドマークの1つである。

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