2008年11月1日土曜日

白鳥は悲しからずや


最初は野鳥の会の協力を得て、あぶくま親水公園でハクチョウの餌付けと監視を続けるとしていた福島市だが、「市民の安全を守る」ために全面的にえさやりを中止することにしたという。しかたないことだろう。

こちら、羽をけがして飛べずに残留している3羽のコハクチョウに餌付けをしているいわき市のMさん。飛来したハクチョウはともかく、「残留組を見殺しにはできない」と毎朝、3羽のえさやりに余念がない。

ところが、わが散歩コースの夏井川(平・神谷)で過ごしている残留コハクチョウが、数日前、1羽もいなくなった。上流の平・塩へも1羽、あるいは4羽、5羽が一時的に飛来するだけで、すっかり寂しい川辺になった。

やって来るのは場所と、えさをくれるMさんの記憶がはたらくからか。それが、仲間もMさんもいないとなると、ハクチョウたちの生物的記憶は切断されて自然に戻る、つまり来なくなる。

それとは別に、残留コハクチョウが姿を消したのは初めてだ。もしや、最古参の「左助」に引っぱられて河口へ下ったのではないか。堤防を車で行くと、やはりいた。河口の右岸に3羽。「左吉」と「左七」にとっては未知の空間だ。

散歩コースでウオッチングする楽しみは減ったが、いつでも見に行ける。そう思いつつも、双眼鏡だけはのぞいてみる。と、きのう(10月31日)の朝6時半すぎ、いなくなったはずの場所に2羽のハクチョウがいた。

飛んで来たハクチョウか。違う。羽の折れ具合からして「左吉」と「左七」だ。やはり「左助」とはうまくやっていけないのか、2羽で再び川をさかのぼって来たのだった。

Mさんがヨシ原から現れて「サキチー」と呼びかける。浅瀬を泳いでいた「左吉」と「左七」が振り向くとすぐUターンし、岸辺に歩き始めた。

Mさんの後ろの砂地には、「待ってました」とばかりにカラスが飛んできて羽を休める。えさを待っている、いつもの朝の光景=写真=だ。Mさんはえさやりを終えると5、6メートル離れた水辺で長靴の底を洗った。覚悟を秘めた光景である。

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