2009年5月29日金曜日

長靴をはいた犬


わが散歩コースの西のはずれに犬猫病院がある。庭に何匹かの犬がつながれている。1匹1匹、種類が異なる。人の姿を見ると吠える犬。犬小屋に上る犬。性格も、しぐさもばらばらだ。早朝、獣医さんがこれらの犬を散歩に連れ出す。

飼い主が飼育を放棄したため、やむなく獣医さんが世話をしているのだと、前に聞いたことがある。一度はつらい目に遭ったが、今は終(つい)の棲家を得たわけだ。

なかに1匹、毛のない犬がいる。最近、分かった。顔としっぽはそのままで、胴体の毛にバリカンが入れられたのだ。背中にはハート形の刈り残し、四本足も長靴をはいたように毛が残された。「長靴をはいた猫」ならぬ「長靴をはいた犬」=写真。5月に何日か暑い日があった。それで、その犬の体調を考えて“上着”を脱がせたのだろう。

ペットに関心がないので、よくは分からない。白の秋田犬だろうか。老いているのだろうか。ほんとに長靴をはいているような脚でふんばり、しょぼしょぼした目でこちらを見ている姿がなんともおかしい。ふさふさした白毛の顔と裸の胴体のアンバランスさも。

「長靴をはいた猫」はヨーロッパにすむ策略家で、悪知恵をはたらかせて主人の若者を姫のムコさんにする。自分も貴族になり上がり、遊びでしかネズミを捕らなくなる。長靴にはそういう魔力があるのか。

こちらの犬はしかし、自前の毛だ。長靴をはいているように見えるだけだから、魔力を発揮することはない。代わりに、散歩する人間の目を楽しませてくれる。ここ数日、散歩へ出かけるとき、真っ先に思い浮かぶのがこの「長靴をはいた犬」だ。犬小屋に入って寝ていると、胸の中心で叫ぶ。「出てきて姿を見せてくれよ」

そばの堤防(通学路)を通る小学生は先刻承知で、学校でも子どもたちの話題になっているのではないか。それほどこのワン公は、超現実的な生き物がどこからか舞い降りてきてそこにいる、といったようなおかしさを発散している。

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

それにしても愛嬌のある格好ですね!

体毛は夏毛に生えかわるので毛がないと朝方や夜は寒いだろうし、蚊の襲来や雨で体が濡れるのを避けるのにも犬種によってはあったほうがいいのにと思います。

家族同然になった我子を思う愛犬家の考え方次第ですけどね。

白い靴下を履いてるようにも見えますね!