2011年10月3日月曜日

キノコ観察会


いわきキノコ同好会のキノコ観察会がきのう(10月2日)、閼伽井嶽で開かれた。

国は9月中旬、県を通じて福島県内の浜通り、中通りの全42市町村と会津地方の猪苗代町で野生キノコの摂取・出荷停止を指示した。

中通り南部で採取されたチチタケから暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことから、まず2町で野生キノコの出荷が停止された。同時に、県は野生キノコの採取を控えるよう呼びかけた。それが、浜通りと中通り全域、そして会津地方では唯一、猪苗代町にまで拡大された、というわけだ。

東日本大震災に伴う原発事故以来、ウミも、マチも、ヤマもあまねく放射性物質の影響を受けている。そのために活動を休止したキノコの会があるという。

いわきキノコ同好会は食菌採取だけを目的にしているわけではない。キノコの学術研究も大きな柱だ。その観点から観察会を実施した。

場所は、国道49号・三和町合戸からの閼伽井嶽登山道と平赤井からの登山道が合流し、水石山へと延びる三差路付近の混交林。モミや赤松などの針葉樹とクリ、コナラなどの広葉樹が交じり合った、なだらかな林だ。11人が参加した。

薄曇りの朝で、緑の葉が屋根になっている林内はほの暗い。「花眼」になった年寄りには、林床の落ち葉も、キノコも区別がつかない。「暗くてキノコが見えない」。そんな声が飛びかった。

キノコ観察とは別に、林内の放射線量をところどころで測定する。閼伽井嶽は標高604.9メートル。そう高い山ではない。

関東森林管理局が実施した国有林内の環境放射線モニタリング調査結果によると、磐域森林管理署管内では、相馬市、南相馬市でやや高く、いわき市はそれほどでもない。小川の上戸渡で唯一、1マイクロシーベルト/時を超える国有林があった。

私が測定したところでは、閼伽井嶽は0.35前後だった。山の高さ、原発からの方角、そんなものが関係しているのだろう。

夏キノコが終わって秋キノコに移る端境期のうえ、台風15号以来、雨がないためにキノコは期待できなかった。結果的にはその通りになったが、不明菌もいくつか採取された。いわきキノコ同好会では、こういうキノコが研究対象になる。会長の富田武子さんが詳しく調べる。

寒かった。この秋初めて寒さを感じた。タオルを首に巻くとようやく首筋のひんやり感がとれた。林内を歩き回れば温かくなる――と思ったが、そう変わらなかった。

少ないキノコに代わってイノシシのフンを見つけた。乾きかけていた。何時間か前に排出されたのだろう。吻(ふん)で土壌をラッセルしたあともあった。林から出て道路を歩いていたら、急斜面のササヤブが切れているところがあった。“シシ道”だ。イノシシたちはこの道を行き来しているのだ。

さて、観察された菌は――。マンネンタケ、ヒラタケ、ホコリタケ=写真(幼菌)、カノシタ、シャカシメジ、オオゴムタケなどで、これらは周知のキノコ。モミタケ、キウロコテングタケ、ミヤマトンビマイタケは初めて見た。初めて名前を聞くキノコ(たとえばヤブレベニタケ)も含めて30種弱のキノコが確認された。今までで一番少なかった。

去年までなら種類を鑑別したあとは、食菌であれば持ち帰り、ありがたく胃袋におさめたものだが、今年は手ぶらでの帰還となった。それでもかまわない。森に入り、森を感じ、森に抱かれたのだから。

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