2011年10月27日木曜日
700円ランチ
会津に住む後輩がいわきにやって来た。一緒に吉野せい賞選考委員会に出たあと、彼を久之浜の「あみ屋」=写真=へ案内した。後輩の父親と、「あみ屋」の経営者の父親は仲がよかった。双葉郡内で学校の先生をしていたという。
3・11以後、経営者夫妻と連絡が取れず、安否が気になっていた。6月になってようやく電話がつながった。後輩は夫妻と顔を合わせてホッとした様子だった。
「あみ屋」は5月中旬に店を再開した。新聞記事になったので、知っていた。昼11時から2時まで、ランチは天丼も、てんぷら定食も、刺し身定食もオール700円だ。年内はこの震災限定メニューで営業するという。700円ランチが受けて、結構にぎわっているようだ。北に過酷な仕事場をかかえる人たちも胃袋を満たしに来る。
「あみ屋」は波立(はったち)海岸の北はずれにある。波立海岸の先は久之浜海岸。いわば両海岸の境に位置している。大津波が久之浜海岸と波立海岸を襲った3月11日、「あみ屋」は奇跡的に助かった。海からではなく、国道6号から水が押し寄せ、駐車場に家電製品などが流れ着いた。しかし、建物は床が水につかる程度で済んだ。
久之浜も波立も、沿岸部の建物はあらかた津波にやられた。「『あみ屋』だけ無事だった」。そんな声が聞こえる。みんなに申し訳ない気持ちだという。
いわき民報社が発行した写真集『3・11あの日を忘れない いわきの記憶』がカウンターに置いてあった。久之浜の住宅地を襲う津波の写真を指し示して、「どこかで見たことがあると思ったら、父のアトリエだった」。
それからざっと2週間後。きのう(10月26日)昼前、せい賞の発表の場に出たあと、「あみ屋」へ車を飛ばした。カミサンは刺し身定食、私はカキフライ定食を食べた。
座敷の隅の壁に6号ほどの油絵が飾ってあった。果物らしきものを手前に配して貝殻を組み合わせた写実画だ。細密描写にうなった。おかみさんに聞く。「お父さんの絵?」「そうです」。久之浜にアトリエを構えた画家らしい作品だと思った。
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