2011年10月14日金曜日
「パリの秋」
いわき市平の小野美術で「阿部幸洋展」が開かれている=写真。10月6日に始まった。17日が最終日だ。ほんとうは4月に予定されていたのが、「3・11」のためにずれこんだ。それから半年余、絵を通していわきに活力を与えたい――作品にそういう視点が加わった。
阿部はスペインに住んでいる。いわき出身で、19歳(20歳だったか)のときに平・草野美術ホールで初個展を開いた。そのとき取材したこちらは22歳(23歳だったかもしれない)。以来、40年余のつきあいだ。
2日目の7日、金曜日に出かけた。いわきでの個展にはいつも帰国する。ほんの少し、それこそ二言、三言だけ話した。3・11のことは前にメールで伝えてある。
3月15日、阿部が息子のようにかわいがっているラサロ君から、こちらの状況を心配するメールが入った。その日、原発事故のために白河市の奥へ避難したため、返信できたのは帰宅後の3月25日。こちらも切迫していたが、スペインでもテレビを前に切迫していたのだろう。連絡が取れるまで気をもませたようだ。
さて、作品は油絵とパステル画と合わせて35点。油絵はスペインの風景、パステル画はパリの秋を描く。エッフェル塔やセーヌ川や橋や街並みを素材にした、半抽象の風景画といってもいい小品が大半を占める。油絵もパステルの質感に合わせるように、光沢を抑えたものになっている。
彩りが豊かだ。長い時間をかけて少しずつ、少しずつ色を増やしてきた。そんな色に対するつつましさ、禁欲性がうかがえる。光、空気、風物、そして色彩。阿部絵画の楽しみ方が年を追って多様になっている。
原発震災の影響で怯えや不安が心にわだかまっているなか、西欧の静かな大地と街を切り取った阿部の絵にホッとした、という女性がいる。絵の力だろう。
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