2008年5月29日木曜日

ウグイスさえずる「草野の森」


いわき市平下神谷(かべや)地内の国道6号バイパス終点「神谷ランプ(本線車道への斜道)」に「草野の森」(約800平方メートル)がある=写真。かたやバイパス、かたや6号本線にはさまれた、住宅地のそばにある広場の、小さな半月形の「緑の小島」だ。

ある日早朝、いつものように散歩の途中で立ち寄ると、まだ高さ2~3メートルの若い「照葉樹の森」の中からウグイスのさえずりが聞こえてきた。ウグイスが縄張りにするまでに森が育ったのだ!

バイパス全線開通を記念して、平成12(2000)年3月、ここに公園が整備された。ランプのり面に、植物生態学者の宮脇昭横浜国立大学名誉教授の指導で、地元の草野、平六小の児童や地区民らがポット苗を植えた。

宮脇さんは「ふるさとの木によるふるさとの森」の再生を願って、精力的に活動を展開している。基本は、その土地本来の潜在自然植生を中心に、その森を構成している多数の樹種を混ぜて植樹する「混植・密植型植樹」だ。それを、いわきのこの地でも実施した。

半分は森、半分は広場の公園に設けられた写真の樹種識別盤によると、植えられたポット苗はタブノキ、スダジイ、アカガシ、アラカシ、シラカシ、ハマヒサカキ、ネズミモチ、ウバメガシ、ウラジロガシ、モチノキ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイなど約25種。植樹から8年がたって若い森になりつつあるとはいっても、落葉広葉樹が広がる北の山国で生まれ育った私には、照葉樹はさっぱり分からない。

いわきの海岸部や平地の潜在植生は、照葉樹だとは承知している。が、見て分かるのはヤブツバキ、トベラ、マルバシャリンバイ、クチナシ、マサキ、アオキぐらいで、タブやカシ類になると識別盤から「これがそうか」と眺める程度にすぎない。

識別盤と地べたの立て札から、寒いときはカンツバキが咲き、少し前はヒラドツツジが周囲を彩るように満開になり、今はマルバシャリンバイとトベラの白い花が開き始めたことが分かる。いずれクチナシも香り高く白い花を咲かせることだろう。

「混植・密植」と聞いてすぐ思い出すのは「団塊の世代」だ。一志(いっし)治夫著『魂の森を行け』(新潮文庫)に「高木や亜高木など何種類もの木を不規則に植えることで、競争、我慢、共生をさせ、高木、亜高木、低木、下草が豊かに育つ森をつくる」とある。要するに「競争・我慢・共生」の矛盾が木々に活力を与えるのだ。

「草野の森」を安易に人間社会にたとえるわけではないが、これは「わが人生の縮図」にして「生涯学習の森」である。1歳の孫が大人になるころには、私は此岸と彼岸のどちらにいるかは分からない。が、間違いなく仰ぎ見るような森になっていることだろう。ウグイスのさえずりから、そんなところまで時間が飛んだ。

0 件のコメント: