2008年5月30日金曜日

「左助」がいない


朝、いつもの時間より遅れて散歩へ出た。平中神谷(かべや)と下神谷の住宅地を抜けて夏井川の堤防へ着いたのが6時50分くらい。

先日、ここで十数年ぶりにカッコウの鳴き声を聞いた。遠回りしてでもカッコウの声を聞きたい――。浄化センターのある下流へ向かって歩き出すと、すぐ「おはようございます」。後ろから聞きなれた声がした。翼をけがしてシベリアへ帰れなくなったコハクチョウに、毎日欠かさずえさをやっているMさんだ。

Mさんは奥さんを助手席に乗せて、対岸から軽トラで毎日、堤防の上の道をやって来る。いつもだと、とっくにえさやりを終えて帰宅している時間だ。問わず語りに「左助がいない」と言う。「わがままで孤独癖がある」という左助を探して堤防を往復したために、帰宅する時間が遅くなったのだ。

残留コハクチョウは4羽。古い順から「左助」「左吉」「左七」の成鳥3羽と、今年シベリアへ帰れずに残った幼鳥の「さくら」だ。「さくら」は体がかなり小さい。体力がないところへけがでもしてか、北帰行がかなわなくなったのだろう。

Mさんは続けた。「河口まで行って来たけど、左助はいなかった。きのう(5月25日)の夕方は浄化センターの向かい(右岸)にいたのに」。私も夕方散歩をして、それは確認している。

「上流の仲間のところへ戻ったんじゃないですか」「上には3羽がいるだけ」=写真=とMさん。平・平窪の越冬地から流れ着いて、平・塩~中神谷をコハクチョウの第二の越冬地にしたパイオニアだ。この7年の間に何度も左助は姿をくらましている。

「夏になると茂みにしけこむことがあるから、今度もそうかなぁ」。左助を熟知しているMさんは、私と別れると車をゆっくり走らせながら、大声を出して呼びかけた。「サスケー」。声を聞いたら茂みから姿を現すはずだが、そんな気配はない。

左助は年を取って、左脚が悪くなった。カクンカクンとかしぐように歩く。Mさんはそれこそハクチョウになって空から探したい心境だろう。

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