2009年12月1日火曜日

「淑子の部屋」


日曜日(11月29日)にいわき市常磐市民会館で開かれた、第3回湯本温泉童謡祭のプログラムの一つ、野口雨情の孫・山登和美さん(栃木県鹿沼市)と、地元常磐の童謡のまちづくり市民会議・久頭見淑子さんによるトークショー=写真=の中身を少し。

雨情は、童謡詩人として世間に迎えられる前の一時期、いわきの湯本温泉で過ごした。その縁を大切にして童謡を歌い継ぎ、親子の情愛を豊かなものにしよう、ぎすぎすした世の中に潤いを取り戻そう――そんな趣旨で市民運動が展開された。その成果の一つが、去年1月の野口雨情記念湯本温泉童謡館の開館だった。

去年の童謡祭では、文学者でもある雨情の息子の野口存弥(のぶや)さんが講演した。今年は存弥さんのオイの山登さんが「「母千穂子から聞いた祖父雨情のこと」と題して、久頭見さんの質問に答えるかたちで雨情のエピソードを語った。戦後生まれの山登さんは生前の雨情を知らない。だから「母から聞いたこと」である。

久頭見さんは、雨情のことをよく勉強している。質問の展開、やりとりが自然で、茶飲み話の延長でもあるかのように、山登さんをリードする。山登さんの言葉がだんだんなめらかになった。総合司会の女性がいみじくも「徹子の部屋」ならぬ「淑子の部屋」と評したが、その通りだと思った。

山登さんは鹿沼市で写真スタジオを経営している。「雨情の孫」ではあるが、日常的には雨情を意識することなく育ち、暮らしてきた。文学にも縁遠い。去年、存弥さんが講演する際、叔母から連絡を受けて初めて童謡館の存在を知り、訪ねた。で、母から聞いた家庭での雨情の様子、自分が記憶している祖母(雨情夫人)のことなどを、淡々と語った。

童謡館には10~12月の企画として、山登さんの好意で雨情愛用の旅行カバンと帽子が展示されている。

雨情関連施設は全国にたくさんある。しかし、お粗末なものも少なくない。野口雨情記念湯本温泉童謡館はボランティアによる「無休・無料」の方針が堅持されている。それを評価しての旅行カバンと帽子の貸し出しだった。なにかこの二つには雨情の旅と人生について想像力を刺激するものがある。

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