2008年10月31日金曜日

粟津則雄館長の朗読コンサート


きのう(10月30日)、いわき芸術文化交流館「アリオス」で「秋の午後の朗読コンサート~いわき市立草野心平記念文学館 粟津則雄館長を迎えて」が開かれた。急遽、チケットが回ってきたので、出かけた。

前半はいわきの若いバイオリニストとピアニスト2人が演奏を披露し、休憩後の後半、粟津館長がピアノ伴奏にのせて草野心平の詩を朗読した=写真。いわきで粟津館長の朗読と語りを愛する人は多い。じっくり聴いたことがないので、いい機会になった。

「秋の夜の会話」から「噛む」まで、粟津館長が心引かれてやまない心平の詩10篇を朗読した。

「秋の夜の会話」はやさしい声音<寒いね/虫がないてる/もうすぐ土のなかだね/瘠せたね/どこがこんなに切ないんだろうね/腹とったら死ぬだろうね/さむいね>と野太い声音<ああさむいね/ああ虫がないてるね/土の中はいやだね/君もずゐぶん痩せたね/腹だろうかね/死にたくはないね/ああ虫がないてるね>を使い分けて、いかにも会話をしている雰囲気を出す。

<るてえる びる もれとりり がいく。/ぐう であとびん むはありんく るてえる。/けえる さみんだ げらげれんで。/……>と「カエル語」でつづられた「ごびらっふの独白」はフランス語風、そのうえシャンソン調。そして、<くらあい天だ底なしの。>で始まる「わが抒情詩」の<ああああああ。>の重く暗いため息。役者顔負けの演技力だ。

それもそのはず。あの尊顔が買われて、映画だかテレビだかの時代劇に出演したことがあるという話を聞いたことがある。「越後屋、そちも…よの」かどうかは分からない。が、いるだけで存在感を醸し出したことは確かだろう。

「知的巨岩」ないし「知的ブルドーザー」とでも形容したくなる人が、きめこまやかに心平の詩を朗読した。これから耳の穴の奥の奥で、<ああああああ。>が反響し続けるに違いない。

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