2011年12月17日土曜日
ハクチョウ問答
平塩地内の夏井川は河川拡幅工事が終了し、水辺の景観が一変した。灌木の茂る中洲が消え、河川敷の畑が姿を消して、岸辺は広々とした砂原になった。ここでハクチョウたちが羽を休めている。
去年までは中洲の下流が休み場だった。今は上流に移動し、新川との合流点付近で休んでいる。毎朝、ハクチョウにえさ(くず米やパンくず)を与えているMさんと堤防で出会う。軽トラを必ず止める。で、短くハクチョウ問答を繰り返す。
きのう(12月16日)は――。「いやー、200羽は越えたかな」「日中は数が少ないように思えるんですけど」「うん、高久の方に行ってるんだわ。ウヂ(自分の家)はあそこ(対岸)にあるんだけど、上を飛んでくとき、『コー、コー』っていうと、『コー、コー』って鳴くんだ。分がんのがな」
確かに、朝日を浴びながら太平洋の方へ向かって飛んで行くハクチョウ=写真=がいる。7羽、6羽といった小グループが多い。飛来数がピークに達しつつあるらしく、日中は各地に分散して過ごしているのだろう。夕方になると、平塩地内、字名で言うと「土手原」の夏井川へ戻ってくる。
ハクチョウのほかにマガモがいる。留鳥のカルガモがいる。カルガモはどのくらい被曝しているだろう。カラスは、ハクセキレイは、ヒヨドリは……。屋内退避もなし、えさの摂取制限もなしと、野生の生きものは放射線にさらされたままだ。Mさんとの話を受けて、転がり出した想念はいつかそこまで行ってしまう。
それで思うのは、文明は人間と自然に対して取り返しがつかないほど罪深いことをしてしまった、ということだ。哲学者の内山節さんは、それを「文明の敗北」と言っている。「孫が生きる時間」のためにそのへんのことをじっくり考えることにしたい。
ところで、けさの新聞は1面で首相の「原発事故収束」宣言を伝えている。はっきりしているのは、これは東京にとっての収束宣言だということ。東京にはこれ以上影響はありませんよ――それだけのことだ。「フクシマ」の人間は誰も原発事故が収束したなどとは思っていない。
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