2011年12月4日日曜日

自由への脱走


早朝7時前のことだ。散歩コースの夏井川堤防を下り、国道6号を渡ろうかというあたりで、前方から三本足の白い犬がやって来た。見覚えがある。近くの動物病院に飼われている何匹かのうちの一匹だ。

ワン公は横道に入ったかと思うと、また戻ってきては国道6号を四倉の方へ遠ざかって行った=写真。歩き方も、駆け方も四本足とそう変わらない。

このワン公には思い出がある。2年前の初夏、暑い日が続いたためか、顔とかかと、背中の一部をのぞいて、きれいに毛が刈られた。背中の毛はハート状に残され、かかとは白い長靴ないしは靴下をはいているようなあんばい。格好の被写体になった。(2009年5月29日付小欄「長靴をはいた犬」に写真があります)

その後、手術で左の後ろ足を切断したのだろう。三本足になってつながれていた。犬は犬なりの運命を受容して生きてきた。

動物病院に飼われている犬は、ある意味では幸せな境遇にある。飼い主が飼育を放棄したため、やむなく獣医さんが世話をしているのだと聞いた。その幸運を振り払って白いワン公は脱走した。自由の身になった。

が、長続きはしないぞ、腹が減ったら戻るしかないではないか――その思いが現実になった。

動物病院は夏井川の堤防のそばにある。車で街へ出かけた折、堤防からワン公の小屋を見た。ワン公が戻っていた。ほんのひとときの「自由への脱走」だった。

でも、でも、と二回も「でも」を言いたくなるほど感情移入が過ぎるかもしれないが、ワン公は十分に満ち足りたようなやさしい表情をしていた。

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