2011年12月21日水曜日

いわき昔野菜図譜


いわき市農業振興課が今年前半、『いわき昔野菜図譜』を発行した。東日本大震災が発生したために公表の機会もなく、ほとんど人の目に触れることはなかった。事業を受託したいわきリエゾンオフィス企業組合が編集し、頼まれて私が序文のようなものを書いた。「三春ネギ」の聞き取り調査を受けた縁による。

きのう(12月20日)、朝日新聞第2福島版「みちのくワイド」に伝統野菜の記事が載った。いわき市の「伝統農産物アーカイブ事業」も取り上げられた。

『いわき昔野菜図譜』は、その初年度事業の成果の一つ。同組合は事業2年目の今年、「昔キュウリ」や「千住一本ネギ(いわき一本太ネギ)」など「いわきの昔野菜」約20種を栽培している。「自産自消」から「地産地消」へ、つまり過去を大事にしつつ未来へ発展させる道筋を描けないか、という思いがそこにはこめられている。

朝日の記事には「震災でこの事業が大いに役立つことになった。西洋ワサビに属するワサビダイコンは山間部の農家1軒だけが栽培していた。原発事故後、その農家が自主避難したため栽培が途絶えかけたが、昨年収穫した株を同組合が育てていたのだ」とあった。

同組合のプロジェクトマネジャーが記者の質問にこたえている。「在来作物は、人がかかわらないと育てられない。自主避難した農家が農業を再開する時まで大事に育てたい」。その意気やよしである。

『いわき昔野菜図譜』のなかの「ワサビダイコン」のページを開く=写真。主な産地、生産の歴史的由来・特徴、代表的な栽培方法が載っている。

産地はいわき市川前町下桶売地区。外来種のホースラディッシュを、先代から自家消費用に栽培し続けて40年、下桶売の風土に合った「昔野菜」にならした。すりおろして刺し身やそば、肉料理の薬味にする。その地はしかし今、放射線量のホットスポットと化した。

ワサビダイコンは、基本的には種ではなく種根(分枝根)で増やすという。根茎を5cmずつに切り分け、上下をまちがえないようにして株間40cmに植え付ける――あとは省略するが、これをリエゾンオフィス企業組合が特別に設けた農園で栽培している、というわけだ。

今年1月28日、「いわき昔野菜フェスティバル」が開かれた。招待されて出かけた。2年目、再びフェスティバルを開くという情報が入った。「香辛料」には昔から興味があるので、今回は特にワサビダイコンと向き合いたい。

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