2011年12月13日火曜日
東京あたり
東京新宿区内藤町の「ラ・ケヤキ」という瀟洒な家=写真=で12月11日、ワークショップ「いわきを聴く」が開かれた。Listenいわき実行委員会が主催するイベントの一環で、カミサンと豊間の旧知の大工志賀秀範さんの3人で参加した。実行委の主体はシャプラニールのスタッフだ。
「ラ・ケヤキ」の外観は洋風だが、中は「和」に満ちていた。食堂のいすは、足の長い人には低すぎる。テーブルの脚が短い。
とにかく型破りな家である。そこでワークショップのほかに、9~11日にはいわきの美術家吉田重信さんが手がける「光の鳥」の展示、いわき民報社提供の被災写真展示、被災前のいわきの海岸線の空撮映像上映といった「いわきを見る」も行われた。
志賀さんの車で出かけた。「首都高」では「次、左折」「間もなく右折」などと、ナビを見ながらナビをやった。会場は新宿御苑の隣接地で、広い庭にケヤキの大木がそびえる、まさに邸宅だ。映画「男と女」の作曲家で主役を演じた仏人男性が日本人の奥さん、子どもと住んでいたという。今はイベントや撮影会場に利用されている。
前夜は「ラ・ケヤキ」に泊まった。2階が宿泊施設になっている。食事は出ない。普通はそれを「素泊まり」という。ワークショップのスタッフと街へ繰り出し、韓国料理を楽しんだあと、「ラ・ケヤキ」で二次会をやった。皆既月食が始まると庭へ出て天を仰いだ。ビルが林立する東京のど真ん中で天体ショーを見るとは思いもよらなかった。
イベント当日、散歩を兼ねて表通りのコンビニへみそ汁を買いに行った。よくよく見たら、一帯は高級住宅街らしかった。マンションの駐車場には国内外の高級車がずらりと並んでいた。ある家の表札には「四谷區内藤町壱番地」とあった。なんともすごいところに泊まったものだ。
ワークショップは午後1時半から5時まで行われた。集まった人は40人、スタッフを含めるとおよそ50人。大学教員、会社役員、コンサルタント、会社員、自営業、主婦、大学生、いわき出身者などさまざま。会場には被災者の声に耳を傾けようという気持ちが充満していた。その真剣さに圧倒された。
東京は、「首都高」でも一般公道でも車がせかせか先を急ぐ。道行く人も歩きが早い。なにより人が多い。その多さがあるからこそ、絶えずなにか「ハレの行事」が行われている。質の高いイベントも可能になる。そんな印象を持った。
にしても、ゆっくりした「いわきの時間」に身を置いている人間には、「東京の時間」はなかなか厄介だ。「邸宅」に泊まったせいでもあるが、すっかり「東京あたり」をしてしまった。
それを治す手は一つしかない。意識して「いわきの時間」に戻ることだ。早朝散歩をする。総合図書館へ行く。ついでに、被災者のための交流スペース「ぶらっと」に顔を出す。帰りには夏井川堤防へ出てハクチョウをウオッチングする。そうして夕方には「東京あたり」が治った。
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