ネギ坊主をつぶさに見ると、黄色く小さな花がびっしり咲いている。ネギ坊主は小花の集合体だ。チョウが来る。ミツバチが来る。ハナアブが来る。夏井川渓谷の無量庵。三春ネギの花と虫たちの協働作業=写真=のあとに種子が形成される。花が咲いて実がなるゆえんだ。
原発事故に負けて栽培をやめたら、種子が絶えてしまう。人間が介在して初めて種子のリレーが可能になる。去年はその一念で栽培を続けた。
春まき品種と違って三春ネギは秋に種をまく。翌年、定植・栽培・収穫し、さらに次の年に残ったネギから採種する――足かけ3年がかりのサイクルだ。
もっと細かく言うと――。秋に苗床をつくって種をまき、越冬して苗が育つのを待つ。一方で、種を採るためにネギを何本か溝(菜園)に残して越冬させる。定植を終えたあと、越冬した古いネギから採種する。種は秋まで冷蔵庫に入れておく。5月に苗を植える、6月に種を採る、10月に種をまく、というのが夏井川渓谷での“ネギ暦”だ。
地元・牛小川の知人が放射能市民測定室で自家栽培の野菜を測ったら、問題がなかった。別の場所でも自家栽培食材の放射能測定が行われている。関係する知人によれば、市場で出荷停止になっている食材はやはり数値が高い。生のままの野菜よりは洗ってゆでた野菜の方が数値は低い、ともいう。
近々、ネギ苗を溝に植え、6月に入って自家採種をすませたら、一度、三春ネギの放射能を測ってもらおうと思う。自家消費野菜の放射能については、いわき市も公民館など21カ所で簡易検査を実施している。近所の公民館もその一つ。状況証拠ではなく、数値を知って、さわさわしている心を穏やかにさせたい。
0 件のコメント:
コメントを投稿