年末年始の長い休みが終わって、いつもの日常が戻ってきた。新年最初の月曜日(1月6日)は役所の仕事始めの日。そして、わが地区では最初のごみ収集日だ。
家の前の歩道にごみ集積所がある。わが家でごみネットの出し入れをしている。出しっぱなしにしていると、だれかが違反ごみを置いていく。それを防ぐために、週末にはネットを取り込む。
月曜日。起きるとすぐ私がごみネットを出す。木曜日、収集車が来たあと、カミサンがごみネットを引っ込める。
年が明けて5日の日曜日夜、「あしたは『燃やすごみ』の最初の収集日、ごみネットを出すこと」、そう自分に言い聞かせて寝た。
正月気分を引きずっていると、ごみネットを出し忘れてカラスの襲来を招く。ネットをかけていても、カラスはごみ袋を突つき、引っ張り出して、生ごみを食い散らかす。生ごみとわかれば、カラスは仲間を呼んで乱暴狼藉に及ぶ。
人間よりまずはカラスだ。正月早々、カラスに隙を見せたくはない。後始末が、なにより大変だから。
年末年始はごみ収集が休みになる。それに合わせてカラスも通りから姿を消した。しかし、静かな日々が続いたと誤解してはならない。カラスはいつも、どこからかえさを狙っている。
ごみ袋はふだんの3倍くらいは出た=写真。やや離れたところにある集積所もこんもりとしている。
いつもの日よりかなりの量が出たから、回収時間も遅れるに違いない。その間にカラスが現れなければいいのだが……。
ほぼ1時間ごとに、家の中から様子をうかがう。ごみ袋は数を増したが、さいわいカラスは現れない。
カラスには盆も正月もない。日々、えさを求めて飛び回っている。どこに集積所があるかは先刻承知だ。苦労せずとも腹を満たせる場所が、そこにあるのだから。
いつもの時間よりはかなり遅い午後零時半すぎ、収集車がやって来た。昼食後は昼寝をする。それを我慢して収集車が来るのを待った。
止まればエンジン音やドアの音でわかる。その音がしたので、急いで家の中から様子をうかがう。ごみ袋はすべて回収された。違反ごみはなかった。
せめて初日だけでもカラスとは無縁でいたい。収集車が来るまで、ずっとそう念じていた。
そのとおりになった。それから30分後、カラスが1羽、近くに来て「カア、カア、カア」と三度鳴いた。私には「あらら、遅かった、残念」と聞こえた。
たまたま初日は人間が勝った。カラスは人間の年末年始休が長すぎたために、油断をしておくれを取ったのだろう。