2025年3月28日金曜日

ミクロの森

                             
   たとえば、いわきの中心市街地からほど近い石森山。そこに張り巡らされた遊歩道のへりに、フラフープ(プラスチック製の輪)を置いたつもりになって読んだ。

D・G・ハスケル/三木直子訳『ミクロの森――1㎡の原生林が語る生命・進化・地球』(築地書館、2013年)=写真。

ハスケルはアメリカの生物学者で、テネシー州にある原生林の地面に直径1メートル余の「定点」を設け、ひんぱんに通って円内の様子を観察した。本書は1年間に及ぶその詳細な記録だ。

帯に本の中身が凝縮されている。「草花、樹木、菌類、カタツムリ、鳥、コヨーテ、風、雪、嵐、地震……。さまざまな生き物たちが織りなす小さな自然から見えてくる遺伝、進化、生態系、地球、そして森の真実」

 森の生態系がもつ物語は、チベットの曼荼羅と同じくらいの面積の中にすべて存在している、と著者はいう。この視点を踏まえながら、紡がれた物語(要旨)をピックアップすると――。

【2月2日】地球の大気に酸素が含まれるようになったのは、約25億年前に光合成が発明されてから。酸素は危険な、化学反応性の高い物質で、酸素に毒された地球からは多くの生物が姿を消し、あるいは身を隠さざるを得なかった。

 ――糠床には嫌気性の酪酸菌がすむ。糠床をかき回さないとこれが増殖して悪臭のもとになる。地球に酸素が生まれたとき、それを嫌って身を隠した生物の一つがこの酪酸菌だったか。

 【5月25日】子育て中のメス鳥はカタツムリが背中にしょっている炭酸カルシウムが欲しくてたまらず、カタツムリを探して森を飛び回る。

 ――カタツムリの本を読んだばかりだったので、理由が気になった。鳥は卵を産む。卵の原材料を調達しないといけない。そのひとつがカタツムリの殻だったのか。

 【12月3日】初めの陸生植物は、根も、茎も、本当の意味での葉ももたない、無秩序に拡がった糸状のものだった。だがその細胞には菌根菌が入りこんでいて、植物が新しい世界にゆっくりと慣れるのを手助けした。

 ――拙ブログでたびたび紹介している植物と菌類の「菌根共生」の始まりがこれだろう。

「もちつもたれつの関係」は地球を覆う緑の8~9割に及ぶ。つまり、菌根が地球の緑を支えている、という認識はもはや一般的らしい。

 【12月26日】この1年、著者は科学的手法を脇に置いて、森に耳を傾けようと試みた。機械や道具を持たずに自然と対峙しようとした。著者は科学がどれほど豊かで、同時にその対象範囲も考え方もいかに狭いものであるかを垣間見た。

 ――私は30~40代前半、休日と平日の昼休みを利用して、多いときには年に100回近く、石森山の遊歩道を巡り歩いた。しかし、ハスケルのような「定点観測」を意識したことはなかった。いわば、定線観測。

あらためて定点、そして定線の両方を組み合わせることでより深く自然の本質に迫れるのではないか、と思った次第。

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