朝、いつものように新聞をめくって見出しを追う。ん⁉ なんだ、これは。浜通りでクマが初めて捕獲された⁉ それも、いわき市に近い大熊町で。4月16日の県紙には仰天した。
町の有害鳥獣捕獲隊がイノシシによる被害を防ぐため、国道288号沿いの山林に罠(わな)を仕掛けた。
捕獲隊が14日朝9時ごろ見ると、罠の中にツキノワグマがいた、というのだ。罠の中とあるから、箱罠と思ったがそうではなかった。翌17日の全国紙には「くくり罠」とあった。。足がはさまって身動きが取れなくなっていたのだ。
くくり罠はイノシシ用としては一般的らしい。箱罠は、つまりは檻(おり)。いわきの山中で見たことがある。そんなに大きいものではない。
罠猟はともかく、クマが捕まっ た場所にまた驚いた。町の広報によると、捕獲場所=同町野上字湯ノ神は南北に伸びる阿武隈高地の東端、太平洋へと続く平地の里山ではないか。
10年前、田村市の実家へ行くのに、震災後初めて大熊町経由で国道288号を利用した。
いわきからは「山麓線」経由で国道288号に折れる。その国道288号に出てすぐの里山が湯ノ神であることを、地図で知った。
大熊でも標高の高い西方の山間部かと思ったら、ずいぶん人里に近い。そんなところまでクマが入り込んでいたのだ。
「阿武隈の山にはクマはいない」。昔からそういわれてきたが、近年はあちこちで姿や足跡が目撃されるようになった。大熊町のクマ捕獲は、「いない」ではもうすまされない「事実」を示す。
いわきはどうか。これまでの出没例としては、①平成24(2012)年7月31日、川前町上桶売字大平地内でクマの足跡を確認②令和2(2020年)6月11日、川前町下桶売字荻地内で住民がクマを目撃し、翌日、直径6~7センチの足跡を確認――というものがある。
ほかに、同じ阿武隈高地の中通り=田村市船引町で令和3(2021)年初夏、ツキノワグマがイノシシ用の罠にかかった。
大熊の例は、広く阿武隈高地をクマがはいかいし、ついには浜通りの里山に現れたという点で衝撃的だ。
よりによって、大熊で――という思いもよぎる。大熊町のマスコットキャラクターがクマだからだ。
国道288号を西へ向かって進むと、田村市との境でこのマスコットキャラクターと出合う=写真。
町によると、「おおちゃんくうちゃん」という愛称がついている。「おおちゃん」はサケを、「くうちゃん」はナシとフルーツのキウイが入った籠を手にしている。いずれも町の特産物だ。
阿武隈の山里では、これから本格的な山菜採りのシーズンに入る。たまたま迷い込んだだけの、一過性のできごとなのかどうか。次は生息というところまで事態が進むのかどうか。大熊に限らず、夏井川渓谷の集落でもクマに注意が必要になった。
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