気象庁はソメイヨシノを生物季節観測に取り入れている。以来、私たちは報道発表を介して、桜=ソメイヨシノの開花を春到来のサインとして受けとめるようになった。
それぞれの地域にソメイヨシノの標本木がある。いわき市の場合は旧小名浜測候所内の桜がそれだ。
測候所が無人化されてからは、地元の市民団体と元職員が協力してこのソメイヨシノをチェックし、「開花宣言」をしている。
今年(2025年)は3月28日に小名浜での開花が宣言された。春がきたか――。若いころは開花の発表にときめいたものだが、今はどうも反応が鈍い。なぜだろう。
ハクモクレンやユキヤナギ、レンギョウなどの開花が先行した。夏井川渓谷でも、アセビやマンサクが咲いている(先の日曜日=3月30日は、用があって渓谷の隠居へは行けなかった。そのため、アカヤシオの開花はまだ確認していない)。
平地のわが家の庭では、ソメイヨシノの開花宣言より早く、プラムが咲き出してすぐ満開になった。
それだけではない。ソメイヨシノに先立って、「シン・桜」といってもいいカワヅザクラの開花を、メディアがニュースで取り上げた。その流れで、平の街なかにある早咲きの桜も紹介された。
言葉は悪いが、ソメイヨシノの開花は、ニュース価値としては二番煎じ、三番煎じでしかなかった。
「きょうは開花が見送られました」。東京では「開花」よりも「開花宣言」の有無が報じられた。これには思わず苦笑した。
開花が宣言されたあと、いわきは冬に逆戻りしたような寒さと雨にたたられた。「花見」気分ではなかったことも、ときめきからは遠い理由だったか。
金曜日(4月4日)に街へ行った帰り、やっと信号待ちの間にソメイヨシノの花を見た=写真。
それくらい今年はソメイヨシノの開花には関心が薄かった。いや、年々薄くなっている。
ソメイヨシノは交配によってつくられた園芸種で、葉より先に花が咲く。てんぐ巣病にかかりやすい。それもあって、ヤマザクラに比べるとはるかに寿命は短い。「寿命60年」説が言われている。
それでソメイヨシノの並木が伐採されたところもある。近所の老木も少し前に切られた。
自分のブログを読むと、私の中ではだいぶ前から「ソメイヨシノ離れ」が起きている。代わるように「発見」したのが、草野心平記念文学館の奥、小玉ダムの周囲を覆うヤマザクラだ。私はひそかにそのへん一帯を「いわきの奥吉野」と呼んでいる。
街の春の主役は、もうソメイヨシノではなくなったのかもしれない。
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