いわきの「桜開花」を伝えるメディアの報道が変わってきた。一番の理由は早咲きの河津桜が生長し、濃いピンクの花が視聴者を引き付けるようになったことだろう。
気象庁の「桜開花」発表はソメイヨシノが基本だ。日本列島は南北に長いため、沖縄県や奄美大島はヒカンザクラ(緋寒桜)、北海道は札幌や室蘭・函館を除いてエゾヤマザクラが観察木になる。
本州に住む人間には、「桜開花」といえばソメイヨシノのことだった。いわきの場合は、小名浜測候所(現小名浜特別地域気象観測所)の職員が敷地内にあるソメイヨシノの花を観測して開花を発表した。
無人化されてからは、小名浜のまちづくり団体が元測候所の職員の協力を得て、独自に開花宣言をしている。
毎年、同じ木を観察して、開花日・満開日などを記録する。それによって列島の生物季節的な動きがわかる。旧小名浜測候所の場合は、今の標本木での観測は平成7(1995)年に始まった。
近年は、オオシマヤマザクラとヒカンザクラの自然交雑から生まれた早咲きの「河津桜」に注目が集まるようになった。
常磐共同火力発電所の敷地内に平成17(2005)年、創立50周年を記念して50本の河津桜が植えられた。その桜が例年、3月中旬には見ごろを迎える。
メディアがソメイヨシノを待ちきれずに、この河津桜に飛びついた。いわき公園にも約50本の河津桜がある。こちらもSNSなどを通じて市民が早い開花を知ることになった。
「シン・桜」である。メディアが河津桜の開花を取り上げて以来、ソメイヨシノの開花は、ニュース価値としては二番煎じでしかなくなった。
私もマチ場だけで暮らしていたころには、ソメイヨシノの開花が春到来を告げる桜と思い込んでいた。
夏井川渓谷の隠居へ通い続けて30年余り。マチのソメイヨシノと時を同じくして咲くアカヤシオ(岩ツツジ)を見ているうちに、少し遅れて山を彩るヤマザクラにも引かれるようになった。
ソメイヨシノは花が先行する。が、ヤマザクラは葉と花が同時だ=写真(4月6日、いわき市暮らしの伝承郷)。花が咲くと、それを支えるように赤い若葉が開く。
草野心平記念文学館の奥、小玉ダムの周囲の山々を、私はひそかに「いわきの奥吉野」と呼んでいる。「山笑う」とはこれをいうのだと。
ソメイヨシノは交配によってつくられた園芸種である。花は見事でも、てんぐ巣病にかかりやすい。それもあってか寿命は短い。
「寿命60年」説が言われている。それを裏付けるように、ソメイヨシノの並木が伐採されたところがある。倒木事故もある。
「年々歳々花相似たり 歳々年々人同じからず」というが、桜を見る人間の気持ちも同じではない。
ソメイヨシノは老いて、もう春の主役ではなくなったのかもしれない。このごろはそんな感慨がよぎる。
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