新しい朝ドラ「風、薫る」が始まった。小泉八雲と妻セツをモデルにした「ばけばけ」が終わって、朝ドラロスになりかけていたところへ「でれすけ」が耳に飛び込んできた。
舞台は明治時代の栃木県那須地域。明治の世になって帰農した元家老の娘が、2人いるヒロインの1人。もう1人のヒロインは東京に住む。やがて2人は出会い、看護の道へ進むというストーリーのようだ。
「でれすけ」は、私が子どものころ、耳にタコができるほど祖母に言われ、親にも言われた。年上の子どもたちも、なにかというと同年代、あるいは年下の子どもたちをけなすときに「でれすけ」を使った。
といって、だれでも「でれすけ」になるから、言われたからといって気にする人間はいない。
福島県と栃木県はもちろん、隣接の茨城県、千葉県でもなじみの言葉だとか。その意味では舞台の一つである北関東を、ひとことでわからせる象徴的な言葉でもある。
この「でれすけ」のおかげでロスな気分が吹き飛び、頭がすぐ「風、薫る」に切り替わった。
「でれすけ」は3月30日の第1話に登場した。翌31日の第2話にも出てきた。まさかスタートから3日連続の「でれすけ」はないだろう。あったら演出の意図がはっきりする。「でれすけ」に神経を集中して第3話を見たが、さすがに3日連続はなかった。
まずは言葉のおさらい。いわき市教委発行の「いわきの方言(調査報告書)」(いわき市文化財基礎調査)から意味を探る=写真。
「でれすけ」は①まぬけ②罵倒する語――とある。これにネットのAI回答を付け足すと、意味は「だらしない人」「間抜け」馬鹿者」などとなる。
斜陽の炭鉱から未来の観光へ。いわき市の常磐炭礦が地下の採掘現場から湧出する温泉を利用して、「常磐ハワイアンセンター」を設立する。同時に炭鉱従業員の子女がフラダンスを習って、入場客に披露する。
それが後年、映画「フラガール」になったが、そのなかでも「でれすけ」が使われていた。「ああ、いわきだな」「福島だな」。南東北の人間もまた「おらほ(わがマチ)の映画」という思いを抱いたものだった。
ついでながら、元家老の娘の生家の撮影は南会津町の奥会津博物館にある「染屋」というかやぶき屋根の建物で行われた。ここは渋沢栄一を主人公にした大河ドラマ「青天を衝け」でも撮影に使われたとか。
「でれすけ」は今後もドラマで使われる予感がする。栃木偏、東京編、そしてどこかのマチが舞台になっても、「なまりなつかしいふるさと」を瞬時に思い出させる効果がある。
これはおまけ。第5話には会津出身の大山捨松が登場した。夫と馬車で田舎道を進んでいたとき、転んで手のひらをすりむいた那須のヒロインの手当てをしてやる。そのとき出た言葉が「さすけねえ(大丈夫)」だった。
捨松はアメリカ留学から帰国後、大山巌と結婚し、日本の看護婦教育などに尽力した。なるほどである。
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