2009年3月20日金曜日

人間の啓蟄


おととい(3月18日)、きのうと南風が吹いて高気圧に覆われ、気温が上昇した。早朝の散歩はダウンジャケットのままだったが、夕方はジャンパーに切り替えた。それでも歩き終えるころには汗ばんできた。まるで春本番だ。

午後4時。夏井川の堤防を行き来する人が急に増えた=写真。いつものように犬を連れて、独りで、夫婦で散歩するお年寄りがいる。ジョギングをする若い女性や、カーディガンを腰に巻いて颯爽と歩いて行く主婦がいる。この人も、あの人も……。初めて見る顔が少なくない。

暖かい陽気に誘われて堤防へ出てみれば、西方、阿武隈の山並みは黄砂に霞んでいる。なにか体内で煙霞に溶け込みたいような衝動が生まれる。巣ごもりを終えて歩かなくてはならない、そんな気持ちのたかぶりが。「人間の啓蟄」である。

土手のツクシが一斉に長くなり、自然繁殖をしたアブラナ科の植物も花茎を立て始めた。摘み草をする人がいる。堤防の植物は昔と違って、有害物質を含んだ大水に何度も沈んでいる。私は30歳のころに一、二度、子どもを連れて摘み草をしたが、それを知ってやめた。

一冬を平塩~中神谷の夏井川で過ごしたコハクチョウも、いわき語でいう「ささらほさら(まばら)」の状態になった。中洲にいるのは50羽程度。ここ何日かで4分の1に減った。河川敷のサイクリングロードへ下りた直後に、2羽のコハクチョウが下流から飛来した。カメラを向けるが間に合わない。このへんがまだまだダメなところだ。

自分にブツブツ言いながら歩き出すと、向こうからどこかで見たことのある顔が自転車でやって来た。「もしや」が「ほんと」になる。阿武隈の山国で中学校の3年間を一緒に過ごした同級生ではないか。近所に住んでいる。このブログも読んでくれている。で、カメラをぶら下げて初めて夏井川を見に来たのだという。

彼もまた「人間の啓蟄」作用を受けてうごめき出した1人だった。

いわきには同級生が8、9人いる。有志で毎年、忘年会をしているが、去年は日程が調整できずに流れた。女性だけで四倉の「蟹洗温泉」へ行ったそうだ。つつましいものである。花見をやろうと約束して別れる。

夜になってニュースを見たら、福島の最高気温は25.1度の夏日、小名浜は17.3度。平はそんなものじゃない、20度を超えていたはずだ――朝晩、毎日堤防の空気に触れている体が反応した。

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