2009年3月18日水曜日

キクザキイチゲ咲く


梅前線は早かった。桜前線も早そうだという。ところが、カタクリ前線はさほどはでない。

いわき市の平地では例年、高校の合格発表が行われる3月中~下旬にカタクリが開花する。それが、だんだん西に連なる阿武隈高地へ移り、いわきのはずれの山里では4月初旬以降になってようやくつぼみが頭を垂れる

毎年、カタクリの花を観察している平地の里山がある。杉山に変わってから、かなりの年数がたつ。生育環境はすこぶる悪い。それでも、カタクリは春先になると葉を出し、必死に光合成を続けて花を咲かせる。訪れる時期の違いもあるが、花数は年によって異なる。しかし、10年、20年という単位で言えば株数は減った。

その里山を先週、訪ねた。杉の落ち葉が堆積している。数カ所からカタクリの葉が出ていたが、花は確認できなかった。早過ぎたのだろう。きのう(3月18日)朝、別の場所を見に行ったら、短い花茎の先端にピンク色のつぼみを付けたものが1つ、2つ、という程度ながら確認できた。ここも遅い。

カタクリは、暖冬にも厳冬にも影響されずにマイペースで葉を出し、花を咲かせるものなのか。ほかのスプリング・エフェメラル(早春植物)はどうなのか。夏井川渓谷(いわき市小川町)の集落近く、夏は木陰になる小流れの草地を見たら、キクザキイチゲが1輪咲いていた=写真。これはいくぶん早い感じがする。

夏井川渓谷はV字谷。岩盤が露出しているくらいだから土壌層は薄い。イワウチワや岩ツツジ(アカヤシオ)など、「イワ」のつく草木はあるが、土壌深く根を張るカタクリは見たことがない。それに代わるスプリング・エフェメラルがキクザキイチゲや、最近新種と確認されたハルトラノオの仲間のアブクマトラノオだ。

スプリング・エフェメラルは、光が林床に踊っているうちに光合成をし、栄養をたくわえて開花し、頭上の落葉樹が葉を開いたころには早くも活動を終えて眠りに就く。春の喜びとはかなさを感じさせる、楚々とした花の一群に酔う日は近い。

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