2009年3月7日土曜日

石森山にも春が


いわき駅前の総合図書館で本を借りた帰り、思い立って平市街地の裏山(石森山)に足を伸ばした。

雪が降り、雨になって、上がった。さあ晴れるかと思ったら、また雨。春先の天気は落ち着かない。すると、森が湿ったからエノキタケが出ているかもしれない――頭の奥でだれかがささやく。雨が続くと石森山が恋しくなるのだ。

わが家からだと、草野小の絹谷分校前を通って林道絹谷石森線に入る。平の街からは、平商業高校、石森ニュータウンを経由してつづら折りの坂道を上りきったあと、林道絹谷石森線に入って絹谷集落へ下る。この林道に接続する石森山の遊歩道が、このところのわがフィールドだ。

林道絹谷石森線をはさむようにして10コース、全長11キロメートルの遊歩道が縦横に張り巡らされている。十数年前には休日と平日の昼休みを利用して年に100回近く、この遊歩道を巡り歩いたものだ。市街地のそばにある里山だからそれができた。どこに何があるかは今もだいたい頭に入っている。

フリーになった一昨年(2007年)暮れから再び、週末の夏井川渓谷行とは別に、月に1、2回は石森山の遊歩道を巡る。キノコは冬も夏も、春も秋も発生する。石森山は1年を通して菌類を観察するには格好の場所だ。観察会も定期的に開かれているらしい。

で、今回もまた絹谷に一番近い「せせらぎの道」を歩いた。行く手を遮っていた山桜の倒木が脇に片付けられていた。切断された幹にウスヒラタケがびっしり生えていた、と言っても盛りを過ぎてとろけていたが。2月に入ったときに気づいていたら……、いい写真が撮れたことだろう。

森の中ほどに行くと道が分かれる。右に「マンサクの道」、左に「さえずりの道」。そのまま「せせらぎの道」を行く。<ユリワサビが咲いているかも>。注意して見ると、白く小さい十字の花=写真=が咲いていた。

秋や冬にはいくら同じ道を歩いてもユリワサビの花を思い出すことはない。春になると即座に記憶が覚醒されて、ユリワサビの花が咲いていた情景が思い浮かぶ。キノコも、鳥もそうだ。かつて出合った時期が巡ってくると、「ここでシロハラと遭遇した」「あそこでタマゴタケを見た」と鮮明なイメージがよみがえる。

よくよく回りを見渡したら、キブシの花穂が淡黄色に染まり始めていた。ではと、覚醒した記憶を手がかりに「マンサクの道」へ分け入る。道の名前の通り、頭上でマンサクの花が咲き誇っていた。石森山にも春が到着したようである。

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