2011年10月10日月曜日

西日本からの便り


稲刈りが行われている。場所によっては天日干しのわらぼっちが立つ。兵隊さんの隊列のようなわらぼっちがあった=写真。秋が深まりつつある。そんなある日――。

年賀状でいわき市からの引っ越し予告をしていた知人夫妻からはがきが来た。「島根県益田市という日本海の町に引っ越しました」。知人は建築士。2人の子どもが広島県と山口県にいる。孫とかかわりを持った暮らしがしたいと、数年前から計画を練ってきた。3・11とは関係がない。が、拍車はかかったろう。

先祖伝来の田畑と家があれば、子どもが同居するか、やがて戻ってくる。そういう可能性は高い。しかし、土地を買いマイホームを建てて、そこで一家が暮らしたとしても、子どもは社会へ出たら、その地にマイホームを建てるか、マンションを求めるかして根づいてしまう。古い住宅団地が過疎化・高齢化していることがそれを物語る。

核家族化と高学歴化が人間の移動と拡散を促した。遠くの大学に入る。全国展開の企業に勤める。転勤が当たり前になる。親の元へは帰らない、帰れない。ならば、親が孫のためにそちらへ近づこう――という一大作戦に出た。孫のための祖父母のIターンはおそらく例がない。

島根県の西部に位置する益田市は、山口県萩市・岩国市、広島県廿日市市・北広島市などと隣接する。益田市から中国山地の向こうの山口市とはJR山口線で結ばれている。途中に津和野がある。SLが走る。長門峡もある。山口県長門市の金子みすゞも、湯田温泉の中原中也も視界に入っていることだろう。

「築60年の古民家を借りて住んでいます」「健康に気をつけ、人との交わりを大切に生活しております」。ネットで探したら、それらしい物件に出合った。畑もある。週末の一家だんらんが目に浮かぶ。

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