2010年5月21日金曜日
チンダルレの花
朝鮮半島に、夏井川渓谷(いわき市小川町)と同じような環境に生育するツツジがある、と知ったのは数年前。いわき市久之浜町のまちづくり団体が年2回発行(現在は休刊)している会報「久之浜通信」第19号で、だった。
夏井川渓谷に春を告げる花はアカヤシオ(岩ツツジ)=写真(4月11日撮影)。その渓谷と似たような韓国の山あいで、いわきの人間が、まだ芽吹く前の岩と松の山肌を染めるピンクの花に出合った。その体験を書いている。聞けば「チンダルレ」(和名・カラムラサキツツジ)だという。「チンダルレ」の言葉が頭に刻み込まれた。
先日、北朝鮮拉致被害者で翻訳家の蓮池薫さんの手記『半島へふたたび』を読んでいたら、「ツツジの花を思う人びと」の項目にこのチンダルレの花が出てきた。
「朝鮮半島や中国東北部では見られるが、日本には自生しない。春になると、ほかのどの花よりも早く、赤みがかったピンク色の花を山肌に咲かせる。だから北では『春を最初に知らせる花』と呼ばれ、『民族に解放の春をもたらした革命軍、抗日遊撃隊の象徴』としても、詩歌に盛り込まれている」
「民族解放の春」の象徴はともかく、チンダルレはやせ地や岩の割れ目のような過酷な環境のなかで育つ。アカヤシオも土壌の少ない岩場に根を張る。全く似たような、過酷な環境に生育するツツジだ。
金素月(キム・ソウォル=1902~34年)という天才詩人がいて、「チンダルレの花」という詩が代表作の一つだということも、『半島へふたたび』で知った。南のみならず、北でも「学校の教科書に載せ、生徒たちに詠ませている」。「春を告げる花」のツツジであることには変わりがないが、その花にこめられた思いは、向こうと日本とでは大きく異なる。
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