2010年5月31日月曜日

ホオノキの花咲く


夏井川渓谷(いわき市小川町)はすっかり青葉に覆われた。一週間前までは至る所で輝いていた薄紫色のフジの花も色褪せてきた。ミズキの白い花も影を潜めた。いよいよ「青葉茂れる季節か」と思ったら、はるか中腹に白い点々が見える。ホオノキの花だ。無量庵の真向かい、見上げる高さにその高木はある。

谷筋にもホオノキは生えている。林内の道を歩いていると、ホオノキの葉や、松ぼっくり状の袋果が落ちているので分かる。花は葉の上につくから、真下からは見えない。長ひょろい葉が輪っか状に空を遮っているだけだ。

幼樹はそこかしこにある。葉はつけても花を咲かせる力はない。下からではなく、上から見たい大型の白い花だ。山道の途中、谷筋にあればその位置で花を見ることができる。しかし、夏井川渓谷には希望を満たす場所はない。

きのう(5月30日)早朝、籠場の滝のすぐ上流、岸辺でこの花を見た。道に沿って細長く続いていた杉林が伐採され、駐車場になった。それで対岸がまるごと見える。そのなかにホオノキの高木もあった。花が咲いていた=写真。花の全体がなんとなく分かる。これまでで一番、至近距離から花を見た。

よく見れば、ポツリ、ポツリとホオノキがある。花が咲いているので分かる。しかし、やはり遠い。20~30メートルは離れているか。目の前で見れば、わがてのひらをはみ出すほどの大ぶりな花のかたちと香りを体験できるのに――と、毎年思うのだが、問屋はそう簡単には卸してくれない。

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