2010年5月10日月曜日

下がり藤


いつのころか定かではないが、わが家の庭にミツバアケビとフジが芽を出し、つるを伸ばして存在を主張するようになった。山から採って来たキノコを調べ、不明なものや食不適のキノコをまとめて庭の片隅に捨てたら、かすかな腐葉土に種子がまぎれこんでいたのだろう。

離れ(物置)の雨樋にからみつき、つるを屋根にまで伸ばしたフジは、次々に薄紫の花を咲かせている。ミツバアケビも小さく地味な花をつけた。こちらは意識して見ないと分からない。

アケビはともかく、フジの力を見くびっていた。離れの屋根に達したフジは、去年あたりから次に触れるところを探してつるの先端を空中に漂わせるようになった。直近は母屋のひさしだ。まるでそれが見えるようにつるがひさしに向かっていた。

車の日よけになるからいいか――のんきなおやじは空中の半分まで伸びたつるを見ながら、どう誘導したものかなどと思案した。

それから何日もたたずにフジの花がガクンと垂れ下がり、車の屋根に触れるようになった。見ると、離れの雨樋が花の重みに耐えられずにはずれかかっていた。「下がり藤」どころか「下がりつる」になったのだ。

フジの花はきれいだが、雨樋の破壊が始まったのでは捨ておけない。花見気分を一掃してフジ退治の挙に出た。つるの半分を断ち切り、つるに支えを施して雨樋の負担をなくした=写真

フジは木をからめ殺す。そのために人は山に入るとフジのつるを切った。その花が多くなったのは、持ち主が山の手入れをしなくなったため――と、かつて聞いたことがある。“雨樋壊し”に何のための教訓だったのか、と反省した。

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