2010年6月23日水曜日
新しい命
わが家の近所に営巣したツバメが卵を産み、温め、孵化したヒナにえさを与え、ヒナが大きくなった。そこまでは前に書いた。そのあと、無事に巣立ったのだろう、「空き巣」になった。どろぼうではなくて巣がからっぽになった――という意味での「空き巣」だが。
その巣でもう一回、ツバメは子育てをするのではないか。朝晩の散歩時、チラリと「空き巣」を見る。今のところ、その気配はない。
飲み会が近所であった。開始、夕方6時。「夏至」の直前だから、たっぷり明るい。会場(スナック)の近くで、巣立ったツバメがピチピチ言いながら電線に止まっていた。成鳥もいた。
30秒ほど立ち止まり、ツバメたちの姿を観察した。幼鳥は成鳥より燕尾が短かった。燕尾の短いツバメは止まり方もぎこちなかった。幼鳥は親を手本に学習を始めたばかりなのだろう。
野鳥の世界は、今が巣立ちの時期。朝晩の散歩時、ハクセキレイの幼鳥らしいのと出合う。体の色が薄い。目のあたりの特徴である白もまるで分からない。だから幼鳥、と分かる。
これら幼鳥との出合いが、ふっとこんな考えを誘った。鳥たちは、住所登録はしていないが、この町で結婚し、子育てをする、翼をもった隣人――すると、雛たちはこの町の「新しい命」、住民だ。
日曜日(6月20日)、夏井川渓谷の無量庵から帰る途中、江田駅の手前で足の長い小さな鳥が1羽、道路の真ん中に立っていた。〈クイナか〉。見たこともない鳥だから、図鑑のイメージが頭を支配する。そうではなかった。ヤマドリかキジのヒナだった。
この子も巣立ったばかりで、人間の暴力的な文化にはまだ慣れていない。車を止めて横断するのを待った。路肩を過ぎて一安心というところを、写真に撮った。そばのガードレールの下には母鳥がいて、私と目が合った。ちゃんと子どもが道路を横断するのを、はらはらしながら見守っていたのだろう。
道路では、タヌキやイタチ、その他の「死物」を見ることが多い。「生物」は、たとえば「死物」をついばむカラス、これがほとんどだ。キジだかヤマドリだかのヒナが道路の真ん中にいるのを見たのは、初めてだった。命ながらえよ。
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