2010年6月2日水曜日

山荘ガーデン


夏井川の支流・小玉川のダム下流左岸、尾根筋にいわき市立草野心平記念文学館がある。駐車場に車を止めると、さらに左側、沢をはさんだ向かいの尾根の中腹から鶏の鳴き声が降って来る。鳴き声につられて見上げると、木々の合間に屋根が見える。〈ああ、あそこに人が住んでるのだ〉と分かる。

きのう(6月1日)午前、家に電話がかかってきた。子どもが中学校のときのPTA仲間(カミサンたち)からだった。私が家に戻ると、カミサンがこれこれこうでと説明する。ピンときた――あの家に違いない。昼どきだが行ってみよう、となった。

文学館への道の途中から右に入り、くねくねした林道を上って行くと、旧知のご夫妻が道端で作業をしていた。幼犬が一匹、道の真ん中に寝そべっていた。

最初はもっと下に別荘をつくった。それを売って上の山を買った。面積は六千坪だという。夏井川渓谷の、わが無量庵は五百坪(借地)――それでも広いと思っていたのが、12倍もあるではないか。そこに家を建てて移り住み、街にある家は人に貸した。別荘時代からいえば二十数年、移り住んで庭づくりを始めてからは6年余とか。

杉が植わっていた斜面を切り開き、家を建て、畑をつくり、沢の水を生かし、岩石を生かして、ロックガーデンをつくった。果樹の苗木を植え、花の苗を植えた。

そうしてその土地に合うものが残り、増殖して、人工の空間とは思えないほど安定してきた。あえて不便な斜面を選んだのは、家から花を見たいためだという。

白いバラの花(ナニワイバラ)がガーデンの真ん中でこぼれるばかりに咲き誇っていた。それを中心にしてニッコウキスゲその他の野草が咲いていた=写真

あれこれ報告しようとするとキリがない。まずは第一印象だけにとどめよう。一言でいえば、「21世紀的生き方」がここにある。よくぞここまで杉林から雑木と野草の園をつくり、自然を回復・増殖したものだ。そして、それは今も続いている。

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