2011年5月11日水曜日

マヒワ


「3・11」から2カ月が過ぎた。“世界”が一変する前、何をしていたんだっけかな――と、写真をチェックしていて思い出したことがある。3月9日、夏井川渓谷の無量庵で冬鳥のマヒワ=写真=の群れを見た。写真に撮った。目に光が入っている。小躍りした2カ月前がはるか昔のことのように思われる。

予期せぬ「死」と「破壊」が瞬時にやって来た。想像を絶する大災害の発生当初には、互助やいたわりあいのきずなが生まれた。「阪神・淡路大震災」のときがそうだった。しかし、日を追うごとに被災者の内面は変化していく。希望と失意、信頼と不信、融和と反目……。いわれなき差別、風評被害にも傷つけられた。

「阪神・淡路大震災」では、被災から半年の間に次のようなことが起きた。「避難して来た親兄弟や子どもたちを受け入れた家庭内のトラブルも深刻化している」「譲り合い、助け合うことで保たれていた避難所の雰囲気は一変した。震災直後、校舎内に満ちていたやさしさは薄れかけている」

西日本だからなのかどうかはわからないが、「震災ショックで“いじめ”がなくなった、という外部の声がある。とんでもない。隙間だらけのおとな社会で、いまなら何をしても許されると勘違いする子さえいる」。そんな一面も浮き彫りになった。(以上、酒井道雄編『神戸発阪神大震災以後』=岩波新書)

2カ月が過ぎて生活再建への支援が課題になってきた。初期に少しかかわった「勿来地区災害ボランティアセンター」が5月20日でいちおう“店じまい”をするという。役目完了、ご苦労さま。でも、次の展開がある。まったく終わるわけではないだろう。

「阪神・淡路大震災」では「次の支援」として、仮設住宅でのお年寄りの話し相手や家事の手伝い、引っ越しや掃除の手伝い、在宅障がい者の介助などが必要となった。そのあたりに支援の重点を移したNGOもある。被災者の経済的困難と精神的葛藤に思いを寄せなければ――と、そんな感慨がよぎる。

2カ月前のことでもう一つ、マヒワと同じ鳥の話を思い出した。夏井川のハクチョウはあの日、大地震の直後にきれいさっぱり姿を消した。生存本能に駆り立てられるように北国へ飛び去った。マヒワは、しばらくは夏井川渓谷にとどまっていてくれただろうが。

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