2011年5月13日金曜日
「針と糸がほしい」
わが家のある街の空気があの日以来=写真、少し変わってきた。初めて見る人がコンビニから新聞を買ってくる。わが家(カミサンの実家の米屋の支店)に見知らぬ人が飛び込んでくる。いわき市のとなりの双葉郡から来たのかもしれない。
双葉郡から水戸市に避難したあと、少しでもふるさとに近いいわきで仮住まいをすることにした女性が、水戸に残っている人たちのために古着を求めにやって来た。
わが家には、近所から古着が届く。「ザ・ピープル」と関係していることを知っているからだろう。店が休みの日曜日など、たまにどさっとビニール袋に入った古着が置かれてある。この際、「ピープル」以前のものとして「どうぞ持って行って」となった。「ありがとうございます、ありがとうございます」。女性の半泣きの声が家に響いた。
津波で家を流された久之浜の老夫婦が近所にアパートを借りた。自転車でやってきた。奥さんから言われたのだろう。「針と糸、どこで売ってっぺ」。カミサンが余っていた針と糸を差し上げた。
そういえば、「3・11」の直後、楢葉町から近くの小学校へ避難した人の一人がやって来た。「歯ブラシありませんか」。どこかのホテルのものがあったので差し上げた。
避難所から仮住まいに移った人たちには、日赤からもらった家電だけではもちろん足りない。こまごまとした日用品が必要なのだ。鍋釜のほかに、はさみ、耳かき、爪切り、楊枝、その他いろいろ。足りないものだらけだ。そういうところに想像力を注がないと、という思いになった。
一方で――。年度替わりには人の異動がある。区の役員をおおせつかっているので、担当の班の動きが気になった。区費納入を担当の3つの班(30人弱)にお願いしたら、2世帯が転出し、1世帯が転入した。
いわき市の人口はこれから、転入してきた双葉郡の人たちを加えて、増加はしないが減少に歯止めがかかるのではないか。それはそれとして、自治体の違いによる「ルール」、たとえばごみの出し方、そんなものもこれから問題になるかもしれない。
地域ではたぶん、受け入れたいと思いながら、そういう小さなトラブルが生まれつつある予感がする。言えば分かってもらえることだが。
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