2011年5月29日日曜日
山崩れ
夏井川渓谷(いわき市小川町上小川字牛小川地内)の無量庵へ行くとき、夏井川に沿う県道の右側に二ツ箭山が見える。必ず頂上のギザギザした岩壁を仰ぐ。
「3・11」のときは頂上の「女体山」の岩の一部が剥落した。頂上の一部が、赤みがかっている。知人の電話や、ブログ「山旅工房『とうほくトレッキング』」をのぞいて、岩が剥落したのを確かめた。
岩が剥落すると、内部の岩が露出する。初めて空気にさらされた岩の表面は赤みがかっている。「この世に生まれ出た岩の赤ちゃん」というフレーズが浮かぶ。「岩の赤ちゃん」は雨に濡れ、風になぶられ、日に焼かれ、寒気にさらされて、やがて潤いを失った大人のように白茶けてくる。
「3・11」のあと、4月11、12日と、いわきの西部(田人、三和)を震源とする「6弱」の余震が連続した。どちらかの日に、二ツ箭山の中腹で山崩れが起きた。新緑に覆われた山容の一部が、まるで皮膚炎を起こしたように、そこだけぽっかり抜けおちて赤茶けている。いつも利用する県道から、それがはっきりと見える。
場所はどこだろう。県道を通るたびに気にかかっていた。先日、知人からの電話で山崩れ現場がわかった。通称「ヤマノカミ」の「大山祇(おおやまつみ)神社」奥の院の上方だという。「二ツ箭断層」の上だ。ということは、単なる土砂崩れらしい。
知人はいわき地域学會の仲間で、いわき市内の鉱物を研究している。金曜日(5月27日)朝、知人の案内で現場を訪ねた。「一人ではこうした現場には入らないことだ。もし私が行方不明になったら、山に入ったはずと言ってほしい」という。
「ヤマノカミ」さまから先の林道は通行止めになっている。そのため、まず「ヤマノカミ」さまに、これから入り込む山中の安全を祈願した。
林道は四倉の八茎(やぐき)へと延びている。各所で落石がみられる。すぐ近くでホトトギスが鳴いた。いい声でさえずっているのはクロツグミか。内心はしかし、山全体が今にも動き出すのではないかと、びくついている。それほどアスファルト舗装がされた林道に、かすかな亀裂や隆起、落石がみられるのだ。
急坂を上っていくこと十数分、二ツ箭山の月山登山口の先が大量の土砂で埋まっていた=写真。土砂は林道を埋め、谷底の永久保川へと急斜面の杉の木をなぎ倒して駆け下った。
土砂は「真砂土(まさど)」らしい。砂よりは粗く、小石よりは小さい。要するに、砂利状。こんな砂利がむき出しになった山道が小川町や川前町には多い。日当たりがよければウドなどがよく生える。
永久保川は荒神(こうじん)川へ注ぎ、荒神川は小川の平野部で夏井川に合流する、という。土砂は川をせき止めるところまではいっていない。川と言っても、地形からみて沢のようなものだろう。
これから梅雨に入り、台風が来て土砂が大量に沢に流れ込むと、どうなるか。きのう(5月28日)から雨が降っている。しかも3日間は傘のマークだ。土砂が永久保川に絶え間なく流れ込んでいる様子が思い浮かぶ。
同じく夏井川に合流する加路(かろ)川をはさんだ二ツ箭山の向かい、JR磐越東線江田駅裏の背戸峨廊(セドガロ)に何カ所か規模は小さいが「せき止め池」のようなものができたという。これが成長して「せき止め湖」になったらコトだ。二ツ箭山の沢では土石流を、背戸峨廊では鉄砲水を警戒する必要がある。
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