上の孫をサッカーの練習会場へ送迎した。もう一人のジイジに用ができて送迎ができなくなったのだろう。会場の内郷コミュニティセンターまでの道すがら、小2とサシで話をした。車窓に映る景色を見ながら「ごみ屋敷」なんていう。
このところ、車中でいわきの総合エンターテイメントバンド「十中八九」の初アルバムを聞いている。ダンサーのひとりに「買う」と言ったら、恵贈にあずかった。
「なに、これ?」と孫に言われる前に、「いわきの音楽だよ」と伝える。少し黙っていた孫が、「どこがいわきなの?」と聞くから、ジャケット=写真=を指さして「ほら、じゃんがらの『じゃんがスカ』とか、アンモナイトの曲(『今夜はアンモNight』)とかあるだろう」――とは言ってみたものの、子どもはクールだ。
「じゃんがスカ」の「じゃんが」はいわき地方の伝統芸能「じゃんがら念仏踊り」から、「今夜はアンモNight」の「アンモ」は化石のアンモナイトからきている。いわき市出身の詩人草野心平の詩を歌にした「蛙のうた~るるる葬送~」もある。
母親のふるさとが化石の宝庫の久之浜・大久地区だから、じゃんがらもアンモナイトも孫は知っている。じゃんがらの「チャンカ、チャンカ」という鉦(かね)の音は、母親の胎内にいたときから聞いている。いわきの人間にとっては、じゃんがらは生まれる前からの、いわきのリズム・音だ。
ジャンルはわからない。が、なにか楽しくなる楽曲が続く。解説に「ジャズ、ファンク、ロック、スカ、ポップス、ラップなど、様々な要素が自由に重なり合う……」とあった。カオス(混沌)状態はアナキスト・心平に通じるものだろう。
「じゃんがスカ」の歌詞に「赤井岳から七浜見れば……」があるが、これはいわきの別の踊り(やっちき踊り)にも出てくる。もとは猥雑な、よくいえば人間のたくましい生命力をうたったものだ。孫はその後も聞き流しながら雑談に応じた。
サッカーの練習は午後4時半から始まり、1時間ちょっとで終わった。開始時間前に、遊びを兼ねて仲間とボールを蹴ったり、輪になったりしていた。ラグビーの五郎丸ポーズをする子がいた。孫もわが家に来たとき、五郎丸ポーズをしたが、この輪のなかで覚えたのだろう。
宵の6時ちょっと前。帰りの車に乗ってしばらくすると、孫が静かになった。まぶたが上がったり下がったりを何回か繰り返したあと、動かなくなった。首がだんだんかしいだ。
急に睡魔が降りてきたようだ。それを見ながら、自分の小2のときのことが思い浮かんだ。やはり、夕食前に遊び疲れてごろ寝をすることがあった。そんな一夜、町が大火事になった。折からの西風で火の粉が艦砲射撃のように飛んできた。すぐ避難した。いのち以外は灰になった。孫は4歳間際で東日本大震災に遭遇し、私らと一時、原発避難をした。それから5年近くたつ。
大火事の翌朝、新聞記者から取材を受けた。その経験からいうのだが、小2は小2なりに対象を客観化する目を持っている。「十中八九」のアルバムについて説明したのは、小2としての理解が可能だと思ったから。「あまちゃん」のテーマソングを連想したかもしれない。
きょう(11月15日)は日曜日(朝6時半過ぎ、雨がやむ)。県議選の投票を済ませたあと、夏井川渓谷の隠居へ出かけ、燃え尽きる寸前のカエデの紅葉を見る。そのあと、草野心平記念文学館へ行く。「十中八九」が出演する。「聴く」だけでは面白さがわからない「見る」バンドでもある。CDをプレゼントしてくれたダンサーも出る。チラシに書いてあった。
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