2008年10月22日水曜日

命かけたえさやり


1年を通して夏井川の残留コハクチョウにえさをやっているMさんと、きのう(10月21日)の朝、堤防の上で話した。こちらは白鳥ウオッチングを兼ねた散歩の途中、Mさんは軽トラを運転してのえさやりの帰り。市役所の職員が「白鳥にえさをやらないでほしい」と言いに来たそうだ。

「渡って来た白鳥はともかく、飛べずに残った4羽には命がけでえさをやってんだ、見殺しにしろというのか」。さわらぬ神にたたりなしの役所の物言いに、Mさんは怒った。今さら手のひらを返したような仕打ちはできないではないか――そんな口ぶりである。

今年の晩春、十和田湖畔や北海道の野付半島、サロマ湖畔で、北帰行途中の白鳥が死んで見つかった。白鳥からは鳥インフルエンザウイルスが検出された。「えさやり中止」の発端はこれだろう。が、鳥インフルエンザウイルスはそうそう人間には感染しない。そのことを基本におかないと議論がねじ曲がる。

厚労省も啓発しているが、①死んでいる鳥や衰弱している鳥には素手で触らない②鳥の排泄物に触れたら手洗い・うがいをする③フンを踏んだら念のために靴底を洗う――ことで予防できる。大量にウイルスを吸い込まない限り、感染の心配はない。白か黒かではなく、やり方を変える、マスクや手袋をして注意深く接する、ということも一案なのだ。

福島市の阿武隈川では関係者に絞ってえさやりを続行することになった。現実的な選択だろう。Mさんも4羽のえさやりを続けるつもりのようだ。「けさ(21日)、残留4羽と合わせて8羽がサケのやな場下流にいた。新しい4羽がえさをがつがつ食っていた」という。

夏井川白鳥を守る会がえさやりを中止したため、平中平窪に飛来するコハクチョウは川に降り立っても腹を満たせない。すぐ飛び立ってえさを探しに行く、あるいはえさを求めて南下する、といったことを繰り返しているのではないだろうか。

どうやら「えさやり中止」は全国的な傾向らしい。人間の善意を支えに、いやそれに依存してこれまでやって来たコハクチョウたちは、突然の知らんぷりにパニック状態になっているに違いない。平塩~中神谷の夏井川でも落ち着かない。姿を見せた=写真=かと思うとすぐ飛び立ち、「冬水たんぼ」を探して旋回する。しかし「冬水たんぼ」は神谷にはない。

えさやりを中止するなら、行政も間に入って各地に「冬水たんぼ」を増やす、くらいのことはしてやるべきではないか。白鳥が本来の野性を取り戻すためにも、そうした代償措置が必要だ。白鳥にマイクを向ければ「人間はなんて身勝手なの」というに違いない。

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