2009年3月1日日曜日

いわきの春の雪


厳寒期を過ぎると、低気圧が本州の南岸を通過するようになる――そう教わったが、今は早い時期から南岸低気圧がやって来る。いわきが雪に見舞われるのはそんなとき。いちだんと春が近づいた証拠だ。が、ノーマルタイヤが当たり前のいわきではたちまちスリップ事故が多発し、交通がマヒする。

金曜日(2月27日)は昼前から雨がみぞれになり、夕方からボタ雪になった。雨なら夕方の散歩は取りやめるが、いわきでは雪はめったにない天からの贈り物。こうもり傘をさして夏井川の堤防を歩いた。

対岸の小高い丘にある専称寺の本堂・庫裏・鍾楼堂の屋根が既に雪で白くなっている。と、大きく蛇行するふもとの夏井川からハクチョウが何羽か飛び立ち、私の目の前を通過して行った。偶然、専称寺をバックにして飛ぶハクチョウを写真に撮ることができた=写真。あとで確認したらオオハクチョウの幼鳥だった。

池波正太郎の『鬼平犯科帳』に「本門寺暮雪」がある。それにならって「専称寺春雪」の写真が撮れるかもしれない――私のレベルならこんなもの、という写真を撮ったあとに、ハクチョウが現れた。

翌2月28日は雨上がりならぬ雪上がり。放射冷却現象が起きて湿ったボタ雪が凍りつき、車のフロントガラスが白くザラメ状になっていた。家の屋根もうっすらと雪をかぶっていた。

それを見て、金子みすゞの言葉を思い出した。雪は雪でしかないのに、この半年、みすゞの童謡詩と向き合ってきたせいか、「上の雪、さむかろな」とか「下の雪、おもかろな」なんて言葉が舌頭を転がる。みすゞの作品(「積った雪」)を知ったばかりに、雪は雪ではなくなった。

早朝散歩に出ると、ところどころで靴が路面に張りつくような感覚があった。濡れた路面が凍っている。ボタ雪にはこれがある。傾斜のあるアスファルト、上面も下面も寒気に襲われる橋、水たまりができる歩道橋の階段も凍ると危ない。

太陽が地面を温め、乾かすまでは車を運転しないことにした。阿武隈の山中で全天候型のタイヤを過信し、4ダブを滑らせて側溝にはまった経験がある。しかも今はノーマルだ。日陰が怖い。今朝(3月1日)はこれから夏井川渓谷の無量庵へ出かける。たぶん昨日一日で道路の雪は消えたことだろう。

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