2009年11月20日金曜日

フジの莢はじける


「ガシャッ」。なにかガラスの容器が落下して割れるような音がした。茶の間のこたつで晩酌をしていたときのこと。夫婦で音の方を見たが、畳には何も落ちていない。テレビのそばの鏡台タンスの上に何本かフジの莢(さや)が置いてある。座ったまま首を長くして見ると、莢の一本が裂けて開いていた。これだ=写真

莢の中には径1.5センチから5ミリくらいの、丸く平たいチョコレート色の種が入っていた。種のベッドは4つ。種は大2、小2。ベッドの大きさはそう変わらないのに、どうして違いが生じるのだろう。

週末を過ごす夏井川渓谷の無量庵の庭には、毎年、どこからか飛んできたカエデの種が根づいて芽生える。土ごと苗ポットに入れて持ち帰り、わが家の庭に移し替えたのが、何本か大きくなった。フジはどうだろう。実生の苗を持ち帰った記憶はない。たぶん、カエデの苗を植えたあとに余った土を捨てたら、なかに種がまぎれ込んでいて活着したのだろう。

ミツバアケビがニシキギに巻きついて、離れのプレハブ小屋の屋根までつるを伸ばすようになった。フジも同じで、小屋の一角を覆いつくすほどに生長した。夏には長い莢をいっぱい垂らす。

先日、孫が遊びに来てこの莢に興味を持った。何本か取ってやると、おもちゃの太鼓をたたき、ガラス戸をたたき、「天使の風鈴」をたたく。そのうちあきてほったらかしにしておいたのを、鏡台タンスの上に置いていたら、乾いて熟して「ガシャッ」と破裂したのだ。

裂けた莢は、後で見るとねじれていた。全身の筋肉を緊張させて、種をやさしく、ふんわり守っていた。種がはじけ飛んだら、筋肉がほぐれて、というより緊張を保っていた神経がプチンと切れてねじれてしまった――そんなイメージが浮かんだ。

山野では夜ごと日ごと、ときを選ばず「ガシャッ」とはじけて鳥や小動物を驚かしているに違いない。わが家でもこれから次々に「ガシャッ」となることだろう。

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